ニューランド

ソヴァージュのニューランドのレビュー・感想・評価

ソヴァージュ(2018年製作の映画)
4.0
これが映画だとスタイル過信・流用の作品が多い中、これは、ジャンプ・カットも細かく手持ちでブレながら、角度・体の部位・対応・フォローや回込み・望遠各者とL全、ティルトやパン、の取り方が妙に奥ゆかしく、タッチの独自へ進む自信が殆ど感じられず、絵のトーンも夜室内は茶系・昼間は薄めと本来厚みある映画であることを遠慮してるような頼りなさ、を感じ受けながらぼうっと観ていった。それらは、やがてこちらが自意識を棄てる次元に至ったとき、意図なくも周囲を包み活きてくるを感じた。
人物たちは積極野望・希望を持つ、自己アピールをするを全く視野に入れることもない。他人に気づかれても、自らは恋の意識・自覚も持てない。男娼たちは、女性の(映画の)場合と違い、精神的な余裕といったものがまるで感じられず、本質的な不安から逃れられない様子で、仲間内の融通もたどたどしく、暴力へも発展してく。深い変わらぬ本質的愛情は、実らせぬことが世を潤滑に進めることと、心得てる。
ここでの感動的抱擁は、性愛・血縁や地縁に基づくものではなく、全ての積極的エロスを欠いたところからうまれくる。ひとが全ての存在理由を失った時、結びつく必然のない者との無媒介の接近にその位置をシフトする、自然の美しさをここでいくつか見ていく事となる。その意味で、診察を介して自己を開示しきって、男娼仲間のひとりへの強い恋の存在の指摘が同時に我が現実世界の無を意味すると悟らされた後の、心理の直接連続性を持たない、女医との唐突の信じがたいくらいのつよい抱擁ほど、感動を与えてくれるものはなかった。そこにはすべてがあって、またない。
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