スチールラグ

宮本から君へのスチールラグのレビュー・感想・評価

宮本から君へ(2019年製作の映画)
4.5
苦しいことばっかりだ。
悔しいことばっかりだ。
カッコ悪いことばっかりだ。
でも、それがなんだってんだ。

レビュー以上

・・・過去最短のレビューで終わらせようと思いましたが、
そういうわけにもいかず、以下に続きます。
でも、出だしがひどいです笑。
内容はもっとひどいです笑。

昔、僕がまだ社畜だった頃、
バブルが来たとか、バブルが弾けたとか、
周りは騒がしかったけど、そんなこと、
末端のヒラ社員には全く関係なかった。
朝から晩まで馬車馬のように働き、
泥のように眠り、また早朝から働いた。
数少ない楽しみのひとつが漫画週刊誌を買うことで、
その中に「宮本から君へ」があった。
宮本が、玉粒のような涙を流す表情をよく覚えている。

映画館に行って驚いた。
必死で生きている宮本がそこにいた。
まぶたを腫らして泣く蒼井優が中野靖子に見えた。
僕も漫画の宮本のようにボロボロ泣けてしようがなかった。

一年ほど前から、邦画中心に観るようになってから、
池松壮亮が少しずつ好きになり始めていた。
ボソボソと、でも低いよく透る声でしゃべる彼が好きだ。
でも、この池松壮亮は全く違う。
泣き、わめき、叫び、唾を飛ばし、怒りに満ちた眼で、
だからなんだってんだ!と言い切る。

その後、僕も社畜を卒業し、少しは偉くもなったりしたけれど、
やっぱり器用に生きることはできなかった。
そして、ある日、訳もなく、鼻クソを弾くように飛ばされた。
次の職場は別次元の地獄で、もがいて、もがいて、苦しんで、
結局しばらく仕事を休む羽目になった。
でも、幸いなことに、昔お世話になった方に、
救われて新しい居場所を見つけることができた。

あれから、宮本はどうしているだろうかと思う。
少しは落ち着いただろうか。
いや、たぶん、相変わらず、泣き、わめき、叫んでいると思う。
僕が昔とちっとも変わらないように。

宮本はどこにでもいると思う。
彼は、正義漢でも、情熱家でも、ヒーローでもない。
ただただ必死で生きているだけだ。
無様で何が悪い。
負けてたまるか

「宮本から君へ」20191015新宿バルト9
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