このレビューはネタバレを含みます
テーマ性は最高。
前作の平成ライダージェネレーションで仮面ライダー自体のメタ否定をやり、今作は平成ライダーの歴史否定をやった。
敵ライダー、も平成なのに昭和あつかいされるブラックや、ZO、Jをモチーフとした皮肉たっぷりのライダーを扱ったのが良かった。造形も映画ライダーらしい装飾に、カッコいいデザインだった。
信長パートが、直接的な話に関係ないパートかと思っていたが、それは勘違いで、歴史事実に対する壮大なテーマぼ前振りであって、決していらないわけではない。
今回、「教科書に載っている歴史と史実は違う」と重大な歴史の解釈の一手を投げはなったソウゴだったが、それが根本のテーマにつながってくる。むしろ、その一言で信長パートにおける信長のキャラクターに突っ込むこと自体が野暮になってしまうからだ。もう我々は本など文献でしか史実を確認することはできない。
つまり、平成という歴史を今体験している我々にしか、その歴史を真に感じることはできないのだ。それは、過去が作りあげた結果でもあって、昭和ライダーがあったから平成ライダーができたという密接な関係性で繋がっているのが脚本としてうまかった。
ノリダーの登場は、非公式。ライダーになれなかった者。ライダーの史実から見放されたものとして出てくる。
ソウゴが影武者であったこと、つまり偽物であっても、その存在は「個」として残っていることを表している。
一方で信長パートで、ゲイツが信長の影武者になることがフリとして効いている。そして、家臣に裏切られるという意味でのウォズなども。
その「個」として、自身の存在を肯定された、ソウゴの成長とともに、平成ライダーがそれぞれ「個」としての存在であること十人十色であることを交えてテーマ解釈へとつながるこのうまさに脱帽。
平成ライダー史を破壊しようとしてくるところにサプライズで仮面ライダーG、舞台版斬月、漫画版クウガが出てくるところは、その「個」を平成という枠組みからも飛び出して続いていくことを意味する。
そして今作は、仮面ライダージオウTVシリーズにおいてのウォズの物語に決着をつけた最終回にもなっている。
ウォズ自身が第四の壁を破るとともに、自身の役割に縛られたものも破ってしまう。
あと、タイムジャッカーが話をややこしくするので出てこなかったのは正解。
バイオライダー最強説は確実。
力だけではダメ。第四の壁を破ること+ギャグの力である平成ライダーの歴史キックをぶつけることで、バイオライダーの力を超える(バイオライダー本体だったら倒せてない)力になる。レッツゴーを思わせる40周年キック同様、「平成」キックは平成ライダー史に残る完全にギャグ。
良いところはたくさんあったが、悪いところも目立つ。
マッハの活躍が少なかったり、敵ライダーの出番も少ない。
さらに、戦隊とテーマが同じなので残念ながらリュウソウジャーが蛇足。
正直TVシリーズのジオウは全然面白くなかったが、今作もストーリーが熱くて面白い作品というわけではないが、とても良い作品だった。
ただ、平成ライダー最後の映画としてはふさわしい作品になったのではないだろうか。