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おかあさんの被爆ピアノのyukiのレビュー・感想・評価

おかあさんの被爆ピアノ(2020年製作の映画)
3.9
おかあさんの被爆ピアノ

「もち」で予告が流れたときから気になっていた今作。
用事の合間に時間がぴったり合ったので観てきました。

調律師の矢川さんが被爆ピアノに誰にでも触れさせてくれるのは、原爆投下を生き延びて美しい音色を奏でるピアノの傷も、逞しさも肌で感じてほしいからではないか。
通りすがりの大学生が激しくジャズナンバーを叩きつけるのでハラハラしていたら、そこはきちんと牽制してくれて、本当にピアノを大切にされているのがつたわる。

主人公が孫娘の菜々子さんだから「おばあちゃんの」被爆ピアノじゃないの?との素朴な疑問はクライマックスで解決します。
ベードーヴェンの悲愴第2楽章は、哀切を帯びながらも慰めに満ちた優しいメロディで、
さまざまな痛みを拭ってくれる名曲です。
何年もピアノに触れずに来たおかあさん。
菜々子さんの椅子に少し腰をおろして、凛と弾く姿を見ながら耳を委ねる。涙が止まらない。
ピアノは被爆しながら、おばあちゃんの命を守り、おかあさんたち家族の繋がりを守る。

矢川さんたちの切実な活動が、平和への意志を継承してくれていると感慨に打たれながらエンドロールに連なる夥しい名前を目で追いました。
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