ノラネコの呑んで観るシネマ

無垢なる証人のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

無垢なる証人(2019年製作の映画)
4.5
素晴らしい仕上がり。
ある事件の国選弁護人となったチョン・ウソン。
事件は自殺なのか殺人なのか、物証が無い中、唯一の目撃者となった自閉症の少女は殺人と証言。
果たして、彼女の言っていることは本当なのか?
主人公は、意思疎通の難しい彼女から、何とか証言を取ろうとする。
元々人権派の弁護士だった主人公が、親の作った借金苦から現実に妥協して、大手事務所に雇われたばかりなのがミソ。
勝つためには、生来嘘がつけない彼女の証言の信憑性を失わせ、否定しなければならない。
それはイコール彼女の心を、深く傷つけれることを意味する。
もともと弱者に寄り添うことを信条としてきた主人公にとっては、自分が一体何者なのかを知る裁判。
物語のミッドポイントからのダイナミックな転換も見事で、キッチリと主人公の矜恃にのせてテーマを描き切りつつ、すべての登場人物について、納得できるところに着地させている。
チョン・ウソンって韓国の福山雅治だな。
良い意味でクセがなく、自然に役の器になる。
「ザ・キング」みたいなアクの強い役でも、本作みたいな平凡な男の役でも、本人の素の印象をキープしたまま無理なく演じられちゃう。
いそうでいないタイプの役者さん。
良い演技だった。