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無垢なる証人のレクのレビュー・感想・評価

無垢なる証人(2019年製作の映画)
4.1
仕事に生きる弁護士がキャリアの為に引き受けた事件で出会った検察側の証人。
つまり、弁護士と検察側の証人は敵同士、主張する内容が対立関係、対置関係にある。
そんな2人が交流していくうちに少女の魅力に惹き込まれて弁護士が事件の真相に疑問を持ち始めるというのがこの物語の大枠です。

自閉症である少女の証言の信憑性と自殺か他殺かを争う法廷劇でありながら、弁護士と証人の交流を描いた人間ドラマとしても濃厚。
作品から溢れる優しさと力強さに号泣必然。
弁護士としての立場や責務、人としての良心の解放。
障害に対する無知故の偏見や侮辱から人として寄り添うこと、歩み寄ることの大切さを学び弁護士の在り方や弁護士としての考え方、自身の人生の価値観へと派生していく素晴らしさ。


言い方は悪いですが、映画というものは所詮は娯楽です。
映画は人生だ。といった大袈裟なことは言えません。
しかし、その娯楽の中で娯楽性を損ねることなく、監督の意図や作品の伝えたいことがしっかりと反映されていて、それでいて押し付けがましくなく観客の価値観を変えるかもしれない…僕が傑作だと思う映画にはそういったものが含まれている気がします。
いや、自分がそう感じ取ったと言った方が正しいのか。

無垢なる証人であるジウとの交流がスノの弁護士の在り方や弁護士としての考え方、そして人生の価値観の変化へと派生していったように、映画『無垢なる証人』を鑑賞した観客が映画の在り方や見方、そして自身の価値観を見直すキッカケとなる。
この映画にはそれだけの力があると思います。
このメタ的な構造は、映画というものの価値そのもののようにも思えるし、自分にとって本当に大切な映画、大好きな映画になりました。
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