niijiifox

ボーダー 二つの世界のniijiifoxのレビュー・感想・評価

ボーダー 二つの世界(2018年製作の映画)
3.6
北欧映画ということと日本用パッケージデザインから、薄気味悪い変な映画なんだろうなくらいの雰囲気しか知らない程度の情報以外なにも知らずに鑑賞。

オープニングクレジットの監督名がAliだったので、中近東とかそのへんの人なのかなと気になり調べたら、イラン系のアリ・アッバシという人が監督でした。この映画は北欧映画特有の強烈な異質感や価値観の違いによる戸惑いがそこまで強くなく、見やすい映画という印象だったので、そう言われると出自とかも関係してたのかもしれません。北欧映画とざっくりでしたがスウェーデン・デンマーク映画ということです。

そして、原作はヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストという『ぼくのエリ 200歳の少女』の著者だそうで、ここでもなるほど、言われてみれば作風や内容、テーマが似てるなと感じました。
エリはヴァンパイア、ティナはトロール。

人間と似てるようで違う存在。マジョリティー側を圧倒するようなパワーを持っていたりする彼女たちは、そこを抑制させながら耐え忍ぶように生きていて、しかも人と違うことに劣等感があり自ら醜いと感じてたりします。
しかしあるきっかけがあり、理不尽さを感じだし、周りを気にせず自分らしく生きようとするんだけど、そうやって生きるためには差異を越える必要がある。そうだとするとどこまで越えていく必要があるのか。そんな境界値あたりでの葛藤を、マイノリティーの視点で語っている映画です。

この映画は美術がよくて、映画が始まってすぐ、主人公の顔のアップでまず驚くメイクや、中盤以降に出てくる諸々の造形もなかなか恐ろしいし、彼らが美しい自然の中ではしゃぐシーンは絵本「かいじゅうたちのいるところ」を彷彿とさせます。動物との触れ合いシーンも美しかったです。
でも、修正は一切無しという触れ込みだったらしいので上映時はあのモザイクなしだったんですね。

顔つきや体つきなどの見た目。好きな食べ物。得意不得意の能力。生殖機能もそうだけどファッションについてもなかなか独特のセンスでマジョリティー側と差異があるティナ。特に最後の服装とか最高です笑。

みんなが自分らしく生きるためには許容したり、許容されたり、境界線を越えたり越えられたりを繰り返してやってくしかないのでしょうね。
niijiifox

niijiifox