ボーダー 二つの世界の作品情報・感想・評価

「ボーダー 二つの世界」に投稿された感想・評価

[二元論では語れない境界の"あちら"と"こちら"] 80点

昨年のカンヌ国際映画祭は私の好きそうな作品がズラッと並んでいたので正に最高って感じだったが、そんな中"ある視点"部門で最高賞を受賞した本作品を覗いてみた。監督のアリ・アッバシはイラン産まれでスウェーデンに移住した経緯があり、本作品は長編劇映画二作目である。

港の税関職員のティナ。彼女は特殊能力的な嗅覚によって、麻薬密輸の青年は勿論のこと、児童ポルノ所持のおっさんの持っていたスマホのSDカードまで摘発する。適材適所の具現化って感じの設定。顔が醜いのも超人的な嗅覚も、物語としてそこにあるのに、ある種寓話的な側面も帯びている。人には誰しもコンプレックスがあり、人には誰しも特技がある。それを極化して表現したのが主人公のティナである。同僚や旦那はティナの容貌を気にしないし、何かあると言えば彼女を信じて待ってくれる。ハリウッド的な"無いって言ったら無いんだよ!"みたいな無駄に主人公を追い込んでヘイトを貯め込むこともない。逆に一般人は彼女の顔を不思議そうに眺めるし、彼女の能力を知らない警察は児童ポルノ摘発の原理が理解できない。あと、飼い犬にめっちゃ吠えられてる。これも一種のボーダーである。

そんな中、ティナと同じ容貌をもったヴォーレが現れる。ティナはヴォーレにも他の犯罪者と同じ"臭い"を感じるが、調べても何も出てこないどころか、尻に同じ様な傷があることまで分かってしまう。そして、ビュッフェのサーモンを手で貪り、木に集る虫を食べるヴォーレをティナは自宅に迎え入れる。何も考えてなさそうな旦那を尻目に、ティナとヴォーレの距離は縮まってゆく。ヴォーレに感じた"臭い"は同族の臭い、超訳すれば"恋の臭い"だったのだ。この辺りから一気に一般化する寓意性は鳴りを潜め、強烈なダークファンタジーへ突き進んでゆく。

原題の通り、この映画には様々な種類のボーダーがある。国境という単純なものから、男女引いては種族の壁に至るまで、多種多様な"境界"が存在するのだ。しかし、存在する全ての"境界"があり得ない角度で宇宙の彼方までふっ飛ばされて、物語は遂に境界の"あちら"と"こちら"という二元論では語れない世界に到達する。

アッバシ監督が移民を経験したという事実も反映されているのだろう。ボーダーを越えた者と越え(られ)なかった者。無限に越えられない両者の間にあるボーダーだけが、永遠に横たわり続けていた。
mizuki

mizukiの感想・評価

3.8
カンヌを騒然とさせた『ぼくのエリ』原作者による怪作。特殊能力を持つ女が同じく奇形の容姿の男と出逢い、自我を巡る探求の旅が始まる。劇薬のような描写が雪崩れ込み続けてもなお、囚われたように目を離せない。
言語化不可能な北欧的マジカルリアリズム映画。

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「北欧ミステリー」というレッテルが貼られた上でみると、とんでもない傑作にも思える。が、とにかく気味が悪い、不気味、意味がわからない。なのに目が離せなくて困る。虫と植物と人間の境界線が曖昧というか、もはや登場する主要人物二人は人間として描かれてさえいないよな気もする。ボーダーの意味がなんとなく伝わってきた。ラースフォントリアーの気配を随所に感じる。
マミ

マミの感想・評価

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素晴らしい名作!

今も余韻に浸っている。
スェーデン語の響きにうっとりした。

天気が良いせいか観客は私以外ひとりだけだった!
やん

やんの感想・評価

4.6
ティナの人生に幸あれ。

みにくいアヒルの子やハリーポッターのような、特別な子が迷い込んで自らのアイデンティティに葛藤する、よくあるストーリー。
だが「よくある話」を見事に根底から覆す素晴らしい脚本。
たまりません。
ひゴル

ひゴルの感想・評価

4.2
とても醜い顔をした女のティナは匂い(人の羞恥心とか危険性とか罪悪感までも)で違法な搬入物を嗅ぎ分ける能力を買われ税関職員として働いていた..

彼女の売りは100%的中立率なので彼女が一度怪しい..と言えば他の税関職員たちは入国者を解放しない..最終的に見つかるまで。

ある日ヴォレというティナに引けを取らない位醜い男が税関を通る..ティナは強烈な危ない臭いを嗅ぎつけて持ち物検査をさせるが何も出てこなかった..一体これは..?

もうこれ以上は全てがネタバレ感があるのでここまで!😂

強烈に引き込まれた..トラウマ級の展開...。
これだから北欧系のファンタジーは面白い~醜い顔は特殊メイクだったんだ..

人間の強烈な差別、常にボーダー(境界線)を引いてしまう閉鎖的な一面を痛烈に風刺したブラックファンタジーと言って置こう..
CHEBUNBUN

CHEBUNBUNの感想・評価

3.5
【人は誰しも《BORDER(境界)》を引いてしまうものだ】
第91回アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞ノミネート作品。無事アカデミー賞前に鑑賞することができました。

この作品は税関職員というBORDER(境界)を守る者が、人間社会というBORDERから爪弾きされてしまう様を風刺したブラックラブストーリーだ。主人公のティナは、醜い顔を持っている。しかし、匂いで危険を探知できる特殊能力を見込まれ税関職員として働いている。彼女は、歯で危険を嗅ぎ分ける。

シィーー、、、シィーーー、シィーーー!と歯でやってくる人々が違法物を持っているのか否かを判断するのです。彼女の的中率は100%相方が、「おい、ティナ、こいつ違法物持っていないぞ!」と言うならば、じっくり歯で危険物の場所を突き止める。例え、スマホカバーに隠していたとしても、彼女の歯は誤魔化せないのだ。そんな彼女の前に、彼女と同じように醜い顔を持った男が現れる。しかも、危険の香りがするではありませんか!しかし、バッグを調べても何も見つからない。なんだろう...と思っていると、また奴が現れた!今度こそ...と思うのだが、またしても見つからない。

本能的に何かを感じ取った彼女は、旅人である彼に住居を提供する。虫を食ったり奇行を繰り返す、その男にだんだんと惹かれ合い、彼女が感じたあの香りが《恋》であると分かってくるのです。

人は誰しもがBORDERを意識的/無意識に引いてしまう。そして、自分と似たような人に惹かれ、自分のBORDERに迎え入れる。本作は一見するとオフビートなアメコミ映画を思わせるヒーロー/ヒロイン映画であるが、実は類は友を呼ぶ、村社会と差別の形を強烈に風刺した作品だったのです。後半にいけばいくほど、理解し難い展開が待ち受け、ラストには嫌悪感を示す人が出てくることでしょう。それでも、この映画は面白い。オススメしたい。テアトル系の番組編成をしているNISHI THE WILDさんも賞賛していたので、恐らくヒューマントラストシネマ渋谷で公開されることでしょう。

今年は、『サスペリア』、『CLIMAX』、『THE HOUSE THAT JACK BUILT』とファンタスティックな傑作が沢山公開されるが、その1本に『BORDER』仲間入りしました!
Nagiko

Nagikoの感想・評価

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このあらすじ読んでから観るとまじでびっくりします。私史上1番のびっくりムービーだったかもしれない‥
haru

haruの感想・評価

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タイトルと遠目にポスターだけ見て、社会派っぽい恋愛ものかななんて思っていたら全然違った
自分と他者と価値観とみたいなテーマの描き方としては面白いのだけど、CGとはいえ、おっとと思うようなシーンが一部あって驚き