最近、珍作と呼ばれるものを観たくて手を出したら、見事に美しく狂っていた作品。
獣人にしか見えないヒロインが、他者の嘘を見抜く特殊能力を使って税関で働いていると自分と同じ獣人と出逢って恋する話。
触りだけでも？な話だが、物語は予想外にちゃんとした話になっていく。
差別やジェンダーや人種の象徴として獣人が存在してるのだが、直接的にメタファーとして具体的なものを連想させないのでファンタジーとリアルの狭間を上手いこと通って、実社会の狭量さを炙り出しつつ、寓話性も浮かび上がらせている。奇妙で美しい残酷なお伽噺のようでもある。
さすが「ぼくのエリ 200歳の少女」の原作者の作品だな、と唸らせる現代の幻想絵巻。
とにかく獣人同士のセックスを見せられている時の、あの何を見せられているのか分からなくなる不思議な感覚は映画史上屈指の珍味である。
怖いもの見たさに、そこだけでも観て欲しい。
私は飯を食いながら観たので、正直飯が不味くなった。それこそが己の内に潜む差別心かもしれない。
ルッキズムに対してここまで挑戦的に観客に突きつけてくる映画は稀有。
本当に美しいモノは何か？を問いかけてくる。
観客の心と眼に訴えかけてくる映画ならではの奇妙な味わい。是非とも観て欲しい。後悔するかは貴方次第。
