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ボーダー 二つの世界のyossieのレビュー・感想・評価

ボーダー 二つの世界(2018年製作の映画)
3.9
「ぼくのエリ」もそうだったけど、これもなかなか衝撃的な作品だった。北欧神話になぞらえたファンタジック的要素もあるんだけど、それ以上に衝撃的でどう表現していいのか分からない。
でもアイデンティティというものに問題意識を投げかけた作品だと思う。

二つの世界…サブタイトルのとおりティーナは二つの世界に存在する。
人の心を臭いとして嗅ぎ分ける能力を持つティーナ。その能力を生かせたのか、税関職員として旅行者の違反行為を見抜いてく。容姿が醜いと子供の頃から疎外されてきたが、森の中の家に住み、森に足を踏み入れれば動物たちは彼女を感じとると近寄ってくる。森の中を裸足で歩き回り、池の中を裸で泳ぐ。まるで日常の嫌な世界でのしがらみを拭い去るかのように癒されているのが感じられる。

そんな中、税関でいつものように違反者の臭いを感じたティーナ。その容疑のあるものヴォーレはティーナのように醜い容姿だった。
ティーナは親の元で他の子と同じように生活してきたけど、ヴォーレはまるで生き別れの兄弟とか身内とかそういうものだと思っていた。

ティーナは自分がなんであるのか、ヴォーレから聞かされることになるが、人として生きてきたことのアイデンティティと本来の在り方に翻弄される。それば性別というものすら根底から覆される内容だった。
ティーナはヴォーレという同胞を得たことで本来の在り方の居心地の良さに開放される。しかしヴォーレが復讐として人間にしている仕打ちにティーナの人間としての感情が許せなかったんだろうな。

そういった意味でティーナは色んな意味でボーダーを超えた存在であり、だからこその「自分とは」を全面に考えさせられる作品であった。

人間に育てられたティーナはヴォーレを警察に突き出すことで人間として生きることを選択したのだと思う。しかし生まれた子供を目の前にして与える食事は、本来の種族としての生き方を生きて欲しいと望む親の姿をみた気がする。
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