ワンコ

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイのワンコのレビュー・感想・評価

4.0
【余計な独り言。時代背景と考えたこと】

僕は実は「逆襲のシャア」はあまり好きではない。
前にもレビューにも書いたけど、まあ、そうなのだ。
この「閃光のハサウェイ」の公開前のリバイバル上映で再度「逆襲のシャア」をドルビーシネマで観たが、やっぱり好きではなかった。

そして、ハサウェイはテロリストなのだと聞いて、今回、この作品に不安とともに臨んだのだが、少し考えたことがあった。

三部作の第一部で、原作も読んでいないのだから、今の段階で、あれこれ見解を述べるのは、どうかと思うが、どんなふうに、この作品が80年代に作られたのか、少し考えさせられることがあったのだ。

テロリズムと云うと、911の印象が非常に強い。
だが、歴史は長く、19世紀にもテロと位置付けられるものもあったらしい。

70年代の日本の三菱重工ビル爆破事件もテロだが、歴史的にテロが国際紛争の手段として大きく注目されたのは80年代ではないかと思う。

代表的なものとして挙げたいのは、

アイルランド民族主義組織のIRAが、ロンドンのハイドパークなどで起こしたテロ。

次に、キリスト教・イスラム教スンニ派・イスラム教シーア派の対立によるレバノン内戦を背景にしたアメリカ大使館、米仏軍兵舎に対する爆破テロ。
数百人規模の死者が出た。

そして、イスラエル問題絡みのローマ空港とウィーン空港への同時テロだ。

こうしたテロを経験して、80年代には、国際社会はテロには無力だと警鐘を鳴らしたり、冷戦下にあっても、いずれはイスラム勢力が新たな不安定ファクターになると予想する政治学者も多くいたのだ。

そして、「逆襲のシャア」から「閃光のハサウェイ」の根底に流れる、地球の人口爆発による環境汚染で、コロニーへの移住を余儀なくされた人々は、イスラエル建国によって難民とならざるをえなかったパレスチナ人を想起させる気がしたのだ。

ただ、パレスチナ難民はイスラエル建国によって国を追われた人々なのに対して、ハサウェイ達は、地球の環境回復のために、地球人に地球を離れろという立場で、これは決定的な違いであることは間違いない。

そして、もしかしたら、この立ち位置の差が、ハサウェイの苦悩に繋がるのだろうか。
ブライトとミライの、西洋と東洋のアイデンティティで揺れ動く、或いは、アムロとシャアの考え方・価値観のなかで揺れ動くように苦悩するのだろうか。

ただ、テロは、どんな理由・思想があろうと、決して受け入れられるものではない。

原作を読む気はないくせに、今は、そんなことを想像してるところです。

「閃光のハサウェイ」は、モビルスーツが驚くほど迫力があって、スピード感も桁違いだ。
視点も工夫が凝らしてある。

人はいつも同じ立ち位置で蠢いているのに、モビルスーツは少しの間に格段と機能やグレードが高まる。
所詮、制御しなくてはならないのは人なのに。

実は、あれこれ考えながら、残りの二部にやや期待が高まってきている。
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