木曳野皐

ロマンスドールの木曳野皐のレビュー・感想・評価

ロマンスドール(2019年製作の映画)
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ファーストカットが意味深なフレーズから始まる。
あの始まり方に惹かれたが、何となく予想がついてしまう。
でもあの言葉が無かったらこの映画にこんなに惹き込まれて無かっただろうとも思う。

導入の雰囲気がとてつもなく好き。
気怠げな高橋一生💯
最初ちゃんと引いてから後半怒涛の熱を魅せるテッちゃん、基高橋一生。さすが。
高橋一生も蒼井優も日常特化なトコある(どんな役でももちろん好きだけど)から、キャスティングに関してはもう何も言う事無いです。今回のベストは渡辺えりさんだったけど。素敵だった〜。
そして何より序盤の乳揉むシーン良かったですねぇ…観た人にしか分からない、あのむず痒くて笑っちゃう、でもド真面目なピエール瀧の胡散臭さ(笑)
「大事なのはリアリティだ、巨乳じゃねぇ、美乳だ、“美しい”“乳”、な?」
ラブドール(ダッチワイフ)の実物見たことないなぁって気付いた。そりゃそうだよね、普通に生きてて21歳女でラブドール触った事ある人の方が稀だと思う。
こんな拘りがあって、こんな職人さんがいて、どんなモノにも命は宿るもんなんかなぁって思った。
全然関係ないけど、丁度今日農家さんに茎ごと枝豆を貰った。
私がいつも食べてるもう塩味に茹で上がってる枝豆もあんなに土だらけで取りにくくて、山盛り貰ってもほとんど葉っぱで豆の部分だけ取ったら小さいバケツのほんの半分だった事に驚いた。
どんなモノにも裏方の苦労や親切があるんだよね。感謝して生きなきゃ。

そして何よりですよ。
私が伝えたいのは。本当に真面目に。
変態だと言われても仕方ないが、
“蒼井優の乳首が出ない”事です。
あの蒼井優が、ですよ。(簡単に乳首出すって言いたい訳ではなく)
この映画では出ないんだ、っていう。
いや、この映画だったから出さないっていう選択肢。ここは監督の腕の見せどころだったと思う。
この〈敢えて出さない〉事によってドールの存在感が際立つ。そして実際に実物と比較される事が無いっていう女優さんへの配慮。なんかこーゆーの素敵だなって思います。
映画への評価というか、私としてはその女優さんへの配慮と優しさ、そして乳首を見せなくても魅せられるカメラカットと蒼井優の女優としての凄さ。これが本当に本当に素晴らしかった。
蒼井優さんの女としての尊厳も女優としての尊厳も守りきってたなぁって感心してしまいました。

ただ高橋一生のナレーションと共に一気に時間が進んでしまうので(気付いたら4年経ってる)そこが惜しいよな〜〜〜。
もっと二人の時間を見てたかったってのもあるけど、少しも映らなかったから本当にどんな時間過ごしたか全く分からなくて。
素敵なカップル、素敵なご夫婦って事は分かっても結局二人がどんな時間を過ごしていつから新婚じゃなくなって、いつからセックスレスになって、みたいなの全然分からなくて。
勿体ない気がしたなぁ。
でもあの手紙にある涙の跡とか些細な部分、テッちゃんですら触れない部分にまで演出拘ってるところ好きです…!
そして【水曜日が消えた】に続き2回連続できたろうさんを観たけど演技力ある人って凄い。温かい人柄の役がお似合いすぎる。
あとシレッと出てる大倉孝二(警察官役)最高です。警察官役似合います。

でもやっぱり最後まで「ロマンス」の部分分からなかったなぁ。
でも“永遠”の使い方は学びました。
ウルッときた。
その分、あの終わり方に少し物足りなさと安っぽさを感じてしまう。
言いたいことは分かる。
でもそれで締めちゃったらなんかそーゆー感じになっちゃうじゃん、軽い感じにさ。
せっかくいい感じだったのに。
泣いてるテッちゃんにせっかく胸打たれた後なのに。
監督さんが重めの題材を軽く仕上げたかったとしても少し安っぽさを感じてしまう。
題材が良かっただけに締めが甘く雑だったのが唯一残念だったと思うところです。
でもあの終わり方もアリなのかなぁ。
高橋一生のナレーションは良かった。
木曳野皐

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