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ロマンスドールのlingyouのレビュー・感想・評価

ロマンスドール(2019年製作の映画)
3.8
最後のラブシーンの何という悲しさ!
こんなに悲しいセックスシーンは見たことがない。

女性性の物格化、モノとしての女体、人格を持った存在を使った自慰対モノとの性交。
違和感を感じつつも、そこにも愛や情熱があることを理解させることで辛うじて共感の方に踏みとどまって観ることができる。

そもそもラブドールは確かに単なる安易なオナニーグッズではない。
女性の肉体をモノとして消費したいという欲求を満たすためだけに誰が6個もゼロがつく買い物をするだろうか?
確かに生々しく描いている分「キモい」と思う感覚は理解できるが、(いや、確かにやっぱりキモいのだが)「ラースとその彼女」に純愛を感じるなら、ここにもやはりそれはあるのだろう。

仕事にのめり込み妻を顧みない男。
本当はファインアートをやりたかったのに・・・という無意識から、のめり込みつつも誇りを持てず、故に嘘をつく男。
一方の妻といえば、夫が働いている時に何をしているのだろう。
妻としての自分。
性の対象としての女。
ほかに彼女自身の生活感は見えない。

セクシュアリティーとジェンダーの認識において、割とコンサバティブな形態をベースにすることで日常性をリアルに浮き立たせているのだろうか。
若干の違和感が全編を通してある。

それでも夫婦の会話、表情の演技は素晴らしい。
夫婦という他者同士の交わりとすれ違いの描き方には身につまされる思いしかない。
こういうのってキツイよね。ブルーバレンタインでもマリッジストーリーでもなんでもさ。

そういうとこ、とても丁寧だから、ベッドで吐息を漏らし身悶えする高橋一成にも、その上で腰をくねらせる蒼井優にも、エロくはあれ、いやらしさよりも温かさをより感じるのだろう。

ああ、パートナーを大事にしよう、大切にしようって、つくづく思いましたよ。
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