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THE INFORMER/三秒間の死角のnoteのネタバレレビュー・内容・結末

THE INFORMER/三秒間の死角(2019年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

模範囚のピートは、自由の身と引き換えにFBIの情報屋として極秘裏に捜査協力することに。その最後の任務として麻薬組織への潜入を任されるが、NY市警の横やりによってFBIに見捨てられる。麻薬組織、NY市警、囚人たち、すべての組織から命を狙われる危機的状況に陥ってしまう…。

「三秒間の死角」ってどんな状況だ?
たった3秒で何が出来るんだ?と興味をそそられて鑑賞。
英国推理作家協会賞を受賞した北欧の犯罪小説を映画化した作品。
追い詰められる男の焦りが伝わるクライム・サスペンスの佳作である。

主人公のジョエル・キナマンの他、ロザムンドパイク、コモン、クライブオーウェン、アナ・デ・アルマスとなかなか豪華なキャスト。

主人公ピートが自由の身になりたいのは、可愛い奥さんと娘と普通に暮らしたいから。
この辺は単身赴任と想像すれば、とても共感しやすい設定。

そもそも、ピートは優秀な軍人で、奥さんが暴漢に絡まれてるのを助けたら、その相手を殺してしまい刑務所へ。
ピートに目をつけたFBIの情報屋となり、娑婆で麻薬の売人として情報を集めていたが、「危険だから、もう辞めよう」としていたところで事件が起こる。

売人仲間がNY市警の潜入捜査官をピートの目の前で撃ち殺してしまう。
NY市警のグレンズは、部下を殺した奴を挙げようと怒りに燃える。
ピートにとっては全くのとばっちりだ。

その上、麻薬組織の元締め「将軍」からピートに命令が下る。
市警殺しの罪をかぶって刑務所へ入り、敵対組織を探れと言うのだ。
断れば妻子の生命が危ない。
今度は妻子を守ることを条件に、FBIはピートを利用して刑務所内の組織も挙げようと企む。
おかげでピートは戻りたくもない刑務所に逆戻りだ。

FBIによって刑務所でピートは独房に入り安全なはずが、なぜか雑居房へ。
そこで敵対勢力に殺されかかる。
刑務所内の組織をリストアップし排除するのが役割だと白状するピート。
すると敵対勢力はピートを利用して「将軍」の組織を逆にあぶり出して潰そうと企む。

今度は「将軍」の仲間に殺されかかるピート。
同時にNY市警のグレンズが刑務所内の受刑者を通してピートに脅しをかける。
3つの組織から狙われたピートはFBI捜査官ウィルコックスに「助けてくれ」と電話で懇願するが、ウィルコックスは上司モンゴメリーから「違法捜査がNY市警にバレるとヤバい。ピートとの繋がりを切れ。」と命令される、ピートと家族を見捨ててしまう。

その頃「将軍」の部下がピートの妻子に迫ってくる。
そこに聞き込みに現れたグレンズによって2人は運良く助け出され、保護される。

切羽詰まったピートは、守衛を人質に刑務所内の倉庫に立てこもる。
窓にガスボンベを並べ、絶体絶命のピートが脱出を懸けて仕込んだ仕掛けとは、看守と服を交換して狙撃手に撃たせることだった。
なるほど狙撃手が命令を確認するまで約3秒。
狙撃兵から放たれた弾は看守とガスボンベを貫通して大爆発。
瀕死の看守が担架に乗せられ、救急車で運ばれるが、乗っているのは看守の服を着たピート。
思わずリュック・ベッソン監督の「レオン」を思い出したのは言うまでもない。

救急車にウィルコックスも乗り込んだが、彼女は罪悪感から彼を庇い、身を隠すよう指示する。

そしてウィルコックスはグレンズに全てを話し、味方に引き入れる。
モンゴメリーは違法捜査の罪でNY市警に逮捕される。
ピートはグレンズからパスポートと旅券を貰うが、FBIが違法捜査の証人たるピートを追っていて、妻子に纏わりついているため近づけない。
やむなくピートは暫く姿をくらませる…。

刑務所内でのピートの生命賭けの駆け引きやリアルな乱闘はハラハラするし、ウィルコックスがピートを裏切った罪悪感との葛藤、グレンズと将軍の手下との乾いた暴力の屋内戦など見どころは多い。

正直なところ、刑務所に入って以降は、誰が味方で誰が敵なのか?混乱するのが難点。
見せ場である「三秒間の死角」も借り物である。
ラストで主人公が逃げおおせて、妻子もFBIに守られているし、家族全員生き残って良かったね、という気にはさせられる。

主人公が追い詰められていくスリルは大したものだが、当初の目的であったはずの麻薬組織殲滅の顛末は有耶無耶なので、どうもモヤモヤする結末だ。

主人公は別に悪者だった訳ではなく、そもそも罪を犯して刑務所に入る羽目になったのは、奥さんを助けるためだった。
そこから転がるようにトラブルに見舞われるのは、見ていてなかなか気の毒。
2つの麻薬組織、NY市警、FBIまで敵になる。
まさに「四面楚歌」を西洋で解釈するとこうなるのでは?と思わせる作品である。
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