こな

閉鎖病棟ーそれぞれの朝ーのこなのネタバレレビュー・内容・結末

閉鎖病棟ーそれぞれの朝ー(2019年製作の映画)
1.1

このレビューはネタバレを含みます

守秘義務もクソもないずさんな対応連発の医療関係者の様子にただただ辟易としました。おかげでヒューマンドラマ的な部分には全然集中できなかったです。
これが精神科病院の状況なのか、とそのまま印象を持ち帰る人がいるのであれば、うわ〜〜ちょっと待って!!!と声をかけたいところです。(誰やねん)

現場にいた身としては映画内の演出にリアリティを感じられず違和感だらけだったので、これから鑑賞する方には、精神科医療に関する情報は自身で改めて辿っていかれることを勧めたいと思います。フィクションとはいえこの現場を取り扱い、映画として公開する以上、もっと緻密に丁寧に演出されるべきだったのでは……。

とくに家族との面談に同席する看護師の台詞はあまりに軽薄で、がっくりきました。
"本人は歩み出そうとしている、そんな時こそ大事に見守ってあげるのがご家族の役目ではないか"、と。
患者本人はもちろん、家族も生活の当事者であるのにもかかわらず、そこの苦悩をないがしろにするような、あまりに短絡的な提案だと感じました。
チュウさん(患者本人)に対する台詞も、本人の意思を踏まえないかのように辛辣なものだけど、家族が支えなくてもよい社会資源がほかにあれば、家族からあんな発言はそもそも出ない。
資源不足の問題は照らされず"家族が世話をしない"ことを批判するような形で次のシーンに切り替わり、あまりの演出の乱暴さに目眩がしました。

患者さん達がこの先の暮らしに困っている様子はあれだけ描かれていたのにソーシャルワーカーすら登場しなかった点は、当事者へ福祉的な支援が行き届いていない現場の描写だったのでしょうか?だとすればこの点は、なんてリアルなんだ、、と思いました!
実際のソーシャルワーカーさんは本当に頭が上がらない程尽力されている方も少なくありません。ただ一方で、それでも手が回らないくらい、資源も担い手も少ないのが現場での実情でもあります。

精神科病院の構造的な問題、その閉鎖性から生じる人権侵害等に焦点化されたわけでもなく、単純に医療関係者の対応の質の悪さが目立ってしまっていて、日本の精神科医療の本来的な問題は全く描き出されておらず……。精神科を舞台にせずとも描けた話じゃないのか?と思ってしまいました。本作は監督が映画制作に伴い脚本を書き下ろしたとのこと。現場のことをどれほどご存じだったのだろう……原作が気になるところです。
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