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窮鼠はチーズの夢を見るのすみのレビュー・感想・評価

窮鼠はチーズの夢を見る(2020年製作の映画)
4.5

「あなたのタバコになりたいと思ってたんだ。指先に挟まってるタバコが羨ましかったんです」

映画4回観て原作読了して諸々補完理解したので改めて感想。
観れば観るほど成田凌もとい今ヶ瀬渉を好きになってしまう映画。
「窮鼠はチーズの夢を見る」っていうタイトルは、窮地に追い込まれた鼠がもう手に入らない大好きなもののことを思い出してしまう、って言う意味だと勝手に思ってるんですけど
この映画を見るまではわたしは窮鼠は今ヶ瀬で、チーズが大伴先輩だと思ってたんですね。
でも実際は2人ともが窮鼠で、2人ともがお互いにとってのチーズだった。
ハメルンの笛につられてドブに落ちた大伴先輩と、自分から楽園を抜け出した今ヶ瀬は2人ともが逃げ場を失った鼠だったんだな、、 としみじみした。
この映画の鍵になるあの黄色い灰皿だけど、あれはもしや鼠に齧られたチーズを模してるのでは、、?と気付いて鳥肌が立った。
あの不自然な歯形みたいな凹み方、絶対そうじゃん。全体を通して美術花丸って感じの映画だった。特に恭一の部屋は素晴らしい。剥き出しのコンクリートの壁に、一個一個が頼りなさすぎるたくさんの照明たち、くすんだ茶色で統一された家具たちもめちゃくちゃバランスが良くてあんな部屋に住んでるのいい男に決まってるんじゃん、、って興奮してた。

この映画は本当に二人ともハマり役だった。
わたしは大倉くんのファンなので大倉くんが出てるドラマや映画は全部見てきたけど、これは間違いなく今までで一番大倉くんの良さを活かせてた。
大倉くんの柔らかくて気怠げな雰囲気とそれに相反する近付き難い美しさは、大伴先輩に通ずるものがあるんじゃないでしょうか。
基本的に表情が乏しくて何を考えてるかわからない大伴先輩がたまに楽しそうに笑うとこっちまでほくほくしちゃったな。
そして成田凌は間違いなく天才。わたしはクズ役の成田凌しか見たことがなかったので今ヶ瀬の健気さと愛らしさには腰が抜けた。
大伴先輩を見るときの恋に溺れたような瞳も、酷いことを言われたあとの苦しそうな声の出し方も全部全部、今ヶ瀬が本当に大伴先輩のことを大好きだからこそできるものだった。
生身の人間だからそんなに都合よく赤面したり青ざめたりできないにも関わらず、この映画の今ヶ瀬はそのとき何を想っているのか、何を押し殺しているのかが手に取るように分かる。
大伴先輩にワインを貰うシーンだったり、「お前を選ぶわけにはいかないよ」って言われるシーンだったり、嬉しさと切なさ、悲しさと安堵が入り混じった表情をしてた。
この映画の成田凌くんの泣き方凄かったな、、観てるだけでこっちも悲しくなっちゃう泣き方だった。しくしく泣くんじゃなくって、悲しみを溜めてた水瓶がいきなり壊れちゃったみたいな泣き方。
成田凌が泣いてた二つのシーンはどっちもものすごく印象に残ってる。
飄々としてて何事にも執着しなさそうな今ヶ瀬が、泣きじゃくるほどに大好きでただ傍にいて幸せになることさえ選べなかったのが本当に、、
わたしの大好きな小説の一節に「人は守りたいと思うものに嘘をつくの。或いは守ろうとするものに」って言う言葉があるんだけれど、この映画の今ヶ瀬はまさにそうなんだよな、、大好きだから自分のものにしたくて、それでも大好きだから幸せになって欲しくて、自分の傍にいてもらえることが嬉しいのに辛かったんだろうな、、
映画ではカットされちゃったけど、原作の「俺は貴方が死ぬほど好きですよ。俺のこと好きになってくれますか?」を成田凌の今ヶ瀬で観たかったな〜。絶対可愛い。

以下ネタバレを含む好きなシーンの羅列。
「あなたのタバコになりたいと思ってたんだ。指先に挟まってるタバコが羨ましかったんです」
って今ヶ瀬がいうシーンが本当に好き。
そのあとの大伴先輩が仕方なさそうに笑って「馬鹿だね、お前は」と頬を撫でるシーンまで最高に好きなんだよな〜
大伴先輩、疑う余地もなく自分のことが大好きでそれでいてすぐに不安になったりいざと言うときに弱気な今ヶ瀬のこと、可愛くて仕方なかったんだろうな〜
今ヶ瀬はきっと自分でもおかしなことを言ってる自覚があって、笑い飛ばされるか、引かれるかと思ってたと思うんだ。それでも当の本人は自分を受け止めて、慈しんでくれた。
ここの今ヶ瀬が少し泣きそうになってるのがすごく良いんだよな〜
頬を撫でるって、なんの意味もない触れ合いだからこそきっと与えられたら嬉しいと思うんだよ。ポテチのシーンで髪を触られるところ然りね。
今ヶ瀬は傷つけられる覚悟はしてても優しくされる準備なんてしてなかっただろうし、いつか傷つくのが怖くてずっと苦しんでたんだと思うから。

そう!あとね、なつきと飲んでてベロベロになった大伴先輩を今ヶ瀬が迎えるシーンも好き。
いつもは自分から手なんて伸ばしてくれないのに、お酒のおかげで甘えてくれるし自分が好意を前面に出しても不快な顔もされないことが嬉しくてめちゃくちゃ大好きオーラ全開で迎える今ヶ瀬が可愛い。あとわたし的死ぬまでに観たい大倉くん堂々のNo. 1を飾る「ベロベロになった大倉くん」がお芝居でも観られてほんとに良かった、、可愛い、、ぐだぐだでご機嫌な大倉くん、、座り込んじゃったときに「いた、、」ってちっちゃい声で痛がってたのちゃんと観てたよかわいいね。

そして何より1度目のお別れのシーンも本当に好きでね、、泣き崩れる今ヶ瀬が、「あなたじゃだめだ」って自分を拒絶した今ヶ瀬を突き放す大伴先輩が悲しくて悲しくて泣いちゃった。初見の時は「お前もずっと苦しかったろ」って先輩が言う理由が分からなかったけど、2回目で分かった。
勝手にスマホを見たり大伴先輩の周りの女関係を嗅ぎ回ってたのは嫉妬とか束縛とかそういうのじゃなくて、「離れなければならなくなったときにすぐに気付けるように」っていう想いがあったからで、大好きだって言う自分の隣にいながら不幸になる準備をしてる今ヶ瀬に大伴先輩も気付いてたってことなんだろうな、、

今ヶ瀬と別れて、たまきに元恋人のことをきかれるシーンの大伴先輩が本当に綺麗なんだよな。
大倉くんはお肌も瞳も髪も色素が薄くて太陽の光に当たるとキラキラ儚く見えるんだけれど、今にも消えそうに微笑みながら彼が言う「俺は幸せだったんだけどね」という言葉に泣いてしまった。
そっか、大伴先輩は今ヶ瀬と一緒にいて幸せだったのか、お別れして抜け殻になってしまうくらい好きだったのか、ってほっとした。
幸せだったのに、「あなたじゃだめだ」って言われたから悲しかったんだね、、
自分は幸せなのにその隣でずっと不幸になる覚悟をされていたら、そりゃ苦しいかもな。
今ヶ瀬が置いて行った灰皿を見つめて「そんなのなくても忘れるわけないのに」って言う大伴くん大好きだった。忘れるつもり自体ちっともないじゃん。

そこから二人合わせて地獄に落ちていくのも本当に好きなんだけれど、ラストシーンがすごく好みだった、、
不幸になる準備ばかりしてたから幸せになるのが怖くて逃げてしまう今ヶ瀬と、それまでは流されてばかりだったのに、自分の意思で大切なものを捨てて今ヶ瀬を選んだ大伴先輩、二人とも窮鼠だよな〜〜
今ヶ瀬の灰皿を置いて今ヶ瀬が座ってた椅子に腰掛ける大伴先輩、出て行っちゃった猫がいつでも帰ってこられるように部屋を整えておく飼い主みたいで性癖だった、、
そんで当の猫は大好きなご主人の元から脱走してしまったことが悲しくて苦しくて泣いちゃうんだよ、、
その救いようのなさがめちゃくちゃ好きだった、、
パンフで監督も言ってたけど、あの後きっと今ヶ瀬は大好きな先輩の元を離れられなくて戻ってきてまた怖くなって出て行って、って言うのを繰り返すんだろうな〜〜
灰皿を割らずにそのままの状態でゴミ箱に捨ててたのが「いつか帰ってくるよ」っていうことの暗示なんだろうなと思う。
今ヶ瀬、ほんとに先輩のもとを離れるときにはきっとあの灰皿を粉々に砕いて消えちゃうんだろうな、、
乳首当てゲームしたり一緒にポテチ食べたりしてた日常が2人に少しでも長く続くように祈るしかないな、、
あとあれですかね!???ラストの大伴先輩が着てた服は今ヶ瀬がワインもらった時にボタンつけてたシャツですかね!????
乳首当てゲームのときの大伴くん、完全に素の大倉くんの笑い方だったし、「アッハッハ!!!待ってぇ!?」って発音めちゃくちゃ関西弁だったしで愛しさが爆発しました。
大倉くんの華やかさとか煌びやかさとか、アイドルらしさを完全に封印した大伴恭一という人物の隙間から垣間見える大倉くんの残像が死ぬほど愛しかった。あと5回は観ます。
現場からは以上です。