MasaichiYaguchi

窮鼠はチーズの夢を見るのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

窮鼠はチーズの夢を見る(2020年製作の映画)
4.0
水城せとなさんの「窮鼠はチーズの夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」を大倉忠義さんと成田凌さんの共演で行定勲監督によって実写映画化された本作は恋に溺れていく2人の男の姿を描いていくのだが、それが異性間ではなくて同性間のものであっても、好きで好きでたまらない気持ち、そこにある多幸感、また逆に生まれる苦しさが繊細にリアルに伝わって来て心を揺さぶられる。
主人公の大伴恭一は広告代理店勤務のサラリーマンだが、優柔不断で尚且つモテる為に不倫を重ねてきたが、その“尻尾”を大学の後輩で探偵業を営む今ヶ瀬渉に掴まれてしまう。
その“尻尾”を白日の下に晒さない為の或る“条件”を今ヶ瀬は恭一に提示するのだが…
今ヶ瀬は大学時代から恭一のことを思い続けていて、ここからホモセクシュアルとヘテロセクシュアルの交わり難い困難な恋が始まる。
この2人を大倉忠義さんと成田凌さんが、時に繊細に、時に体当たりで演じていて、彼らが作り出す独特な世界観に知らない内に引き込まれていく。
この作品には恋に纏わる“名台詞”が幾つも登場する。
「心底惚れるって、すべてにおいて その人だけが例外になっちゃう、ってことなんですね。」
「ずっとあなたが好きでした。」
「僕と、付き合いますか?」
「恋愛でじたばたもがくより、大切なことが人生にはいくらでもあるだろう。」
「俺は、お前を選ぶわけにはいかないよ」
「僕はまだ、本当の恋を知らなかった。」
特に最後の台詞を聞いた時、自分に立ち返ってみて胸が締め付けられるような切なさや悔恨を覚えた。
頭ではどうしようもない、いけないと分かっていても抑えられない感情、葛藤や嫉妬がリアルに伝わってくる本作は、恋することの素晴らしさと共にその苦しさを思い出させてくれます。