すあまさえ

窮鼠はチーズの夢を見るのすあまさえのレビュー・感想・評価

窮鼠はチーズの夢を見る(2020年製作の映画)
3.7

同期が原作をかしてくれた。
同じ監督の「劇場」が好きだった。
だから観ようと思った。

原作を読んだからこういう感覚なのか。
それとも、読んでいたからあそこまで理解できたという事なのかな。


いろんな方のレビューには苦しいとか、切ないとか書かれてあったけど、原作を読んでから観ちゃうと、その感情には一切なれない。
原作の方が痛くてズキズキするから。

むしろ原作よりも強調されてたのは、恭一と、特に今ヶ瀬の怖さ、人間の裏表というか、光と影みたいな側面。その描き方は秀逸だったと思う。

酔っ払って家に帰ってきた恭一を当たり前の様に出迎える、むしろ見せつけるシーン。
カーテンが届いても開けない、灰皿はきちんとしまうも、目の届くところにあり、後片付け中の水を止める。早く帰って欲しかったんだね。

そういう模様を観るのが好きな人からすると、面白い作品だったんじゃないかな。


原作では愛ってなんだろうとか、愛の形を考えるきっかけと深さがあるけど、映画ではそっちにフォーカスしているんじゃなくって、人間の感情の使い方とか流れが有りありと描かれていて、恐ろしかったりする。
この雰囲気を撮るのはたしかに、行定監督が得意な気がする。

だから、いわゆるBL好きな人たちはそこまで満足出来なかったんじゃないかな。恋愛の感情が溢れ出すシーンもなくなってたし。
原作が大好きな人からすれば、いわゆる残念な実写化だったのかも、と思った。

原作に忠実に撮るとすれば、90分じゃ描ききれない。だったら二部作にした方がいいと思うけど、そもそもきっと行定監督はそういうものを撮りたかったんじゃないんだもんね。

映画って監督によって変わりますよね。

原作は原作で好きだし、映画はなるほどなぁっていう感じです、笑
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