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フォードvsフェラーリのペジオのレビュー・感想・評価

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)
4.5
挑戦者とは常に名前に「vs」が付く者たちのこと

相当熱い映画なんだけども
実話でありながら、物語としての構図が抜群に良くて
タイトルの通り、主人公たちにとってフェラーリは「敵」なのだけれども、別に憎しというわけでなく、その業界の「絶対的王者」…「カリスマ」みたいな存在として君臨してる
そんなカリスマに対して「この人みたいになりたい」でなく「この人に勝ちたい」という動機(?)で動く主人公たちに、古き良き「少年マンガ的」な、スポーツ漫画的な清々しさが漂っている(殴り合って仲直りとかまんま少年マンガ。)
企業間のメンツの張り合いで降って沸いた王者への挑戦権という「チャンス」に抗えない彼らに美学を感じられて本当に魅力的

映画で「実際の敵」として描かれるのは、「挑戦者」たる主人公たちの意を介さないフォード社の役員たち(大企業としての自負なんかもあるだろうから、自分たちの「挑戦者」という立場を「介せない」というのが実際のところだろうが。)
けれども彼らを「嫌な敵」として一緒くたに括るのではなく、それぞれにキチンとキャラクターが肉付けされているのが好印象(フォード二世のキャラの良さが光る。ベソかくシーンでちゃんと離れたところに車を止める辺りに、駆け引きもあろうが一定の敬意なんかも感じられてなんか好き。)

その結果として浮かび上がるのは、「敵」などといった「不純なもの」を世界一のスピードで全て置き去りにした世界(レースをスリリングに美しく、且つ観客に「体感」させるよう描いていたのが良き。)
ああ…ここにいるのは、もう「俺」と「お前」だけだぜ……みたいな「客観性」がオープニングと終盤のマット・デイモンのモノローグに宿っていた(そういう冷静さと情熱の入り混じった感覚がカッコいいのだ。)
「俺」vs「俺」…ベタだけど真理だな~

そのまま突き抜けていってもらっても個人的には構わなかったのだが、その後現実に帰ってくるかの様なラストの展開は、この映画が「大人」の映画である証拠だったのだろう
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