RiRi

フォードvsフェラーリのRiRiのレビュー・感想・評価

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)
4.8
7000回転に達する時、“それ”はやってくる

私は車やレースに興味がなく知識もないので鑑賞前は心配でしたが、これは単なる「車の映画」ではなかったです。計3回も観てしまいました。
もちろん、タイトル通りフォードとフェラーリの競争、企業の論理と個人の矜持の対立、ル・マンに至るまでのシェルビーとマイルズの情熱と信念を追った物語なのですが、人生で何かに打ち込んだ事がある人は皆目頭が熱くなるはずです。

レースシーンにおける圧倒的な臨場感。音、振動、スピード、恐怖、そして栄光。そしてクリスチャン・ベールとマット・デイモンの二大俳優はもちろん、全俳優の演技がもう文句無しに素晴らしかった…。マイルズの最期も含め、ほぼ事実に基づいているというのも驚きでした。

【回転数7,000の世界】

"There's a point at 7,000 RPM... where everything fades. The machine becomes weightless. Just disappears. And all that's left is a body moving through space and time. 7,000 RPM. That's where you meet it. You feel it coming. It creeps up on you, close in your ear. Asks you a question. The only question that matters. Who are you?"

「回転数7,000の世界。そこではすべてが消えていく。マシンは重さを失い、ただ無となる。残るのは、空間と時間を突き抜ける肉体だけ。
7000回転——そこで“それ”に出会う。
“それ”は近づいてくる。耳元に忍び寄って、ひとつだけ、たったひとつの問いを投げかける。
『お前は誰だ?』」

人間は車と同じで、誰もが“レブリミット(回転数の限界)”を持っています。限界まで自分を追い込んで、それ以上はもう無理だと思うリミットです。
人間にはマシンのように制御装置がないので、無理をしすぎて壊れてしまうこともあります。
それでも人生という“走行”の中で、私達は常に働き続け、挑戦し続けて、自分の限界、つまり「7000回転」に到達する時がくる。そこは栄光と狂気の狭間で、ギリギリのバランスを取るような境界線上。
そして、本当にそこに辿り着いた時——自分だけのリズムや光を見つけて、全力で生き、全力で動いている時——人生のあらゆるものが消えていく。悩みも、不安も、痛みも、過去も、すべてがどうでもよくなる。

——残るのは、空間と時間を突き抜ける肉体だけ。

その瞬間、あなたは自分に問いかけることになります。
もっと踏むか、アクセルを緩めるか。
傷つくのが怖くて止まってしまう人間か?それとも、栄光をつかむためにアクセルを踏み込む覚悟のある人間か?
自分が何者なのかが、そこで試されるのです。

「Who are you?(お前は誰だ?)」
RiRi

RiRi