スチールラグ

フォードvsフェラーリのスチールラグのレビュー・感想・評価

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)
4.0
しびれる。喉がカラカラだ。
映画館を出て、ペットボトルまるごと飲み干した。

まず、ケンがカッコ良い。
7000回転の向こう側をただひたすら純粋に追い求めるスピードの申し子。
同時に、妻に愛され、子どもから尊敬される良き父親。
「ざまあみろ」と悪態をつく人間味も魅力的。

そして、シェル。自らの役割を良くわかっている。
かれの仕事はバカでかい組織を説得すること。
でも彼が、組織のボスを説得するのに使うのは、
精緻なExcelの表でも、グラフィックなPPTでも無い。
リアルな感覚をズドンと打ち込んで見せる。

でも、一番カッコ良かったのは、ケンの妻のモリーだった。
夫の口を割らせるために、でかいステーションワゴンを猛スピードで走らせてみせる。
かと思うと、失意の底にある夫の職場に、バスケットにビールを忍ばせ慰めにやって来る。
こんな女性には間違いなく敵わない。出会った男性はその幸運を天に感謝するしかない。

レースシーンのカッコ良さは言わずもがな。
地を這うようなアングルが緊張感を増し、タイヤから伝わって来る路面の突き上げすら感じる。燃えるようなエンジンを背負って疾走しているドライバーのヒリヒリした感じが半端無く伝わってくる。ガコンというシフトのアナログな音も相俟ってCGを多用したエンタメ系カーアクションとは明らかに一線を画す。

物語、人物、アクション全てそろった快作でした。

「フォードvsフェラーリ」MOVIXさいたま20200113
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