じい

フォードvsフェラーリのじいのレビュー・感想・評価

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)
4.5
上映時間などのタイミングなんやらが合わず上映終了間際に駆け込みで近所の映画館で鑑賞しましたが、これはIMAXで観たかったな。

それはさておき。
カーレースに関する知識はほぼ無いので、だからこそこの分野に詳しい知識があるレビュアーの方が指摘されている点が気にならず楽しめたのかも知れませんが、私はとても好きな映画です。
とても良かったです。

強いて言えば、画面転換の直前に次のシーンの劇伴が流れはじめる演出は個人的にはあまり好きではないです。
そのシーンが終わるんだなってことが却って気になってしまって集中力が削がれます。ジェームズ・マンゴールド監督の他の作品でも確か使ってた気がする。違うかな。

でもそんなことなど気にならないほど映像の臨場感、迫力、繊細な演出、素晴らしかったです。

後半の2人のタイミングがぴったり合うシーンで涙が溢れました。2人の相性の良さ、信頼関係がどこからくるのかの説得力を表現するにこれ以上無いシーンです。

クリスチャン・ベールがとにかく素晴らしいです。彼のすごさは主演でも助演でも“受け”の上手さだと思います。
感情を表に出したり演技感を声高に主張するのではなく佇まいで役を表現する“引き”の素晴らしさに何度も心打たれ涙しました。

飄々とした物腰、話し方、整備屋のおじさん以外の何者にも見えないのに、でもレーサーとしての卓越した才覚を秘めている佇まい、言葉以外で伝えてくる情報量の多さに舌を巻きました。

レース中の表情のアップで表現された動揺や高揚感、冷静さ、諦念、達成感は圧巻です。まさか自分がレースシーンで泣くとは思っていませんでした。
観る前はカーレースも車のこともよく知らないからレースシーンで退屈しちゃわないかなと思っていましたがとんでもなかったです。

マット・デイモンも好きな俳優さんです。アイアコッカ役のジョン・バーンサルの曲者だけど良い奴感も、知らない俳優さんでしたがシェルビーのサポートをするフィルおじさんの包容力もすごく良かったです。
フォードの社長がシェルビーに手荒な方法で説得されてシェルビー側につくかと思いきややっぱりお前はそっち側なのね、っていう現実感もほろ苦くて説得力がありました。
フェラーリの社長のお帽子のシーンも素敵でした。

名シーンに溢れた心に残る作品です。
尊敬と信頼で結ばれた男達の物語でした。
じい

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