フランケンシュタマチ

ゴーストランドの惨劇のフランケンシュタマチのレビュー・感想・評価

ゴーストランドの惨劇(2018年製作の映画)
5.0
「騙されたと思って観てほしい」

現代ホラーの最高峰の1つ。というかもはや暴力映画の域。
田舎の叔母の家に越してきたシングルマザーと姉妹の元に、暴漢が襲いかかる。
この一連の流れがもう既に恐ろしいのに、あくまでそれは序章に過ぎない。
中盤まではゴシックホラー版『マーターズ』的にトラウマ・亡霊(幻覚)に苦しめられる様を描き、そこからストーリー展開がガラッと変貌し、絶望が加速する。これぞまさにパスカル・ロジェ筋!見事なミスリードと伏線回収でした。

強烈な造形の暴漢や生々しくて厭な暴力描写、家の内装の気味悪さは『悪魔のいけにえ』を想起させ、後継者と呼んでもいいくらい(明らかに意識しているカットもあり)。
ジャンプスケアが多い上、当然ながらゴア描写は『マーターズ』より薄いですが、恐怖の演出はより洗練された印象です。相変わらず撮影時の役者さん達が心配になります..ジェニファー・ケントみたく安心材料が欲しい。

そしてやはり、ただ女性が胸糞悪く痛ぶられるだけに留まらない。
作品に漂う悪趣味さとは裏腹に、描いているのは『マーターズ』同様真っ当な「愛」についての物語であり、「現実に向き合う」という普遍的なテーマ性を有しています。

https://horror2.jp/32227
ホラー通信様のインタビュー記事では、思い悩むティーンエイジャーであったロジェ監督がいかにしてホラー映画(創作)に魅入られたか、そして現在に至るまでどれだけ深い愛情を注いでいるのか。ということが伺えました。
そんな彼が本作では主人公に自身のパーソナリティを投影させ、客観的な視点を向けている。かつ、「現実逃避は虚無である」と語り切る。
これはとても誠実な姿勢ですし、説得力と強度のある作品に仕上げるその手腕はやはり本物。

残酷さが売りと思われがちなパスカル・ロジェ監督ですが、その下にある芯の通ったテーマ性とその美しさこそ彼の作家性。
しかも本作は『マーターズ』では生きている内に成し遂げることの出来なかった2人の絆の再興を目撃可能な上に、以外にも優しさに包まれた着地をする為、完全にノックアウトされ思わず号泣。あれは泣いちゃうよ。

流石に『ロッキー』のような気軽さはないですが、私にとってこの『ゴーストランドの惨劇』は辛い時・逃げ出したい時に喝を入れてくれる傑作です。