タイトルコールからエンドロールまで、耳と目は完璧に支配されていました。
まばたきした時間が勿体無いと思うくらい、密度の濃い作品でした。
似たような構成の多々ある音楽ドキュメンタリーの中で、群を抜く傑作と感じました。
僕もピアノ弾きの端くれとして、ビル・エヴァンスの素晴らしさをそこそこ解しているはずである、という前提で劇場を訪れました。
そして、僕がビル・エヴァンスについて、恐ろしく無知であることを思い知らされた事がショックでした。
こんなショックなら、毎晩でも受けてみたいものです。
もちろん、たった90分でビル・エヴァンスの全てを理解できるはずもありません。
本作を観終わって『本当のビル・エヴァンスを理解できた』とは全く感じません。
むしろ『本当のビル・エヴァンスを知りたい』という猛烈な欲求に駆られました。
ビル・エヴァンスという果てしないストーリーの、最上級のプロローグだと思います。
