幽斎

エリカ&パトリック事件簿 踊る骸/ヒドゥン・チャイルド 埋もれた真実の幽斎のレビュー・感想・評価

4.0
原作者Camilla Lackbergは、スウェーデンを代表する国民的推理作家。代表作「エリカ&パトリック」は世界60か国で累計2300万部を超える人気作品。本国では既に7作品がドラマ化され、本作はシリーズ第5作目。他にもAXNミステリーで「説教師」「悪童」「死を哭く鳥」の3作品も視聴済。Lackbergは「笑う警官」Per Wahlöö、「ミレニアム」Stieg Larssonを超える評価を受け、スウェーデンのAgatha Christieと言われてる。正統派な謎解きのロジックと北欧では珍しく登場人物の繊細な心理描写が特長。彼女は2度離婚した3児の母で、主人公と重なる部分が多い、因みに美人(笑)。

日本では同じ北欧モノ「ミレニアム」や「特捜部Q」より出遅れた感が有るが、私的には初ソフト化が、何でこの作品?と正直困惑気味。物語は作家のエリカと夫で刑事のパトリックの成長物語的なファクターも有るだけに、いきなり5作目から始まるのは、どうなのよ。但し前作を見ないとダメと言う訳では無いので、北欧ミステリーのファンの方は手に取っても損は無い。原作小説シリーズも是非お薦めです。

日本の方の為にお浚い(お前もだろ(笑)、第2次世界大戦中のスウェーデンはデンマーク、ノルウェーと同じく中立国を形成。しかし隣国が相次いでドイツに侵攻された上に、ソ連がフィンランドを侵略し始め、極めて難しい舵取りを迫られる。しかし他国に頼らない強い外交政策が功を奏し、その卓越した手腕をアメリカも高く評価した。今も独自の外交と軍事力でEUの中で際立つ存在感を放つ国。と言う事を理解した上で見ると分り易い。

物語はネオナチの恐怖に今も脅える現代と、60年前に封印された記憶の2つの世代が交錯した謎を解くミステリー。冒頭はハリウッド並みの掴みの良さを見せるが、その後は北欧らしく心淋、暗鬱、嗜虐で淡々と進行するので、集中しないと脱落する可能性も有る。古い話がベースの為、登場人物に老人が多くキャラクターの判別度も低め。第2次大戦の悲話なので唸らせるトリックが出る訳では無いが、物語は良く出来てるので、最後まで我慢してご覧頂くと楽しめる。あとスウェーデンのイクメン制度には何時も感心。

「ミレニアム」の派手さは無く、「特捜部Q」ほどキャラが立ってる訳でも無い。しかし、720ページの長編を上手く映像に纏めてる。事件の舞台は作家の出身地スウェーデンの海辺の街フィエルバッカ、とても美しい。私の友人は原作が好き過ぎて聖地巡礼に旅だった程だ。

静かな大人のミステリーがお好きな方にお薦めです。
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