ヤマタノオロチ

ドラゴンクエスト ユア・ストーリーのヤマタノオロチのネタバレレビュー・内容・結末

1.0

このレビューはネタバレを含みます

「ドラゴンクエスト5」を使った壮大な「ドラえもん のび太と夢幻三剣士」



※ここではあえてグラフィック・声優の演技等について言及しません。それらの出来が霞む程、他の部分の問題が大きすぎました。

【予習の有無】
世界観やキャラ、全てドラゴンクエスト5(以下ドラクエ5)に依存しています。ですので予習が必須ですが、予習するのはかなり難しいと思われます。(理由は総評で)

ドラクエ5をプレイ済でも展開が早くてついていけません。最初から始まるのにも関わらず色々イベントが飛ばされています。そのうえ設定も微妙に異なるので違和感極まりない。(ましてや呪文が急所に入るなんて…)知っててもついて行けないのに、初見の場合は置いてけぼり不回避でしょう。


【脚本】
ドラクエ5のストーリーは幼少期から始まり、ゲーム内容の1/4程を占めます。ですが上記にもあるように本作ではイベントを飛ばしているために幼少期は8分間、後々影響してくる花嫁候補とのフラグシーンはビアンカ・フローラ合わせてたった数十秒間のドット動画です。劇場で観た場合うっかり見逃す可能性だってあります。

公開直後から叩かれてましたが、ボス戦の直前(ボスはゲマではなくミルドラース)でコンピュータウイルスが現れ『これまでの話はゲームでの出来事です』と告げプレイ前の主人公の記憶と共に現実の世界へ戻そうとします。ワクチンであるスラリンの力を借りて、主人公はめでたくエンディングを迎えることが出来ますが、果たしてこの描写は本当に必要だったのでしょうか?

似たような展開を「ドラえもん のび太と夢幻三剣士」で見ました。これもボス戦の直前で現実世界に戻されます。奇しくも総監督と監督は「STAND BY ME ドラえもん」の監督コンビです。これは偶然の一致でしょうか?


【総評】
初見には不親切極まりなく、知ってる人にはただの罰です。
本作がベースとなっているドラクエ5の世界最速クリアタイムは4時間50分です。文章飛ばして達人の腕前を持ったとしても5時間以上はかかるのは確実でしょう。そんなゲームをわざわざ予習して本作を見ようと思う人がどれだけ居るでしょうか?つまり、一見さんお断りの「やった事ある人しか観ない」のを前提で制作された映画になるのです。

しかし、「総監督はドラクエ5未プレイ」という話が出回っています。嘘か本当か分かりませんが、個人の考えとしては未プレイだと思います。何故なら、嫁取りの材料となる幼少期のビアンカとのエピソードががっつりカットされてるからです。

ドラクエ5をプレイした人なら誰もが天秤にかけたことでしょう「金持ちで能力が高いフローラ」か「能力は低いけど過ごした時間が長いビアンカ」か。ドラクエ5のサブタイトルは「天空の花嫁」です。ある意味でここがストーリーのピークであり、プレイヤーが一番悩むポイントです。「主人公はゲームのプレイヤーです」と最後にネタバラシして、ドラクエ5で遊んだ頃を思い出して欲しいのであれば、一番カットしてはいけない部分になるはず。

もう一つ未プレイだと思える点は主人公がウイルスに「ここでの出来事はもう一つの現実だ」と言い切ってるシーンです。正直、当時の少年ゲーマーにとって本当の思い出は「ゲームを介した友達や家族との記憶」です。「ハイスコアガール」でもゲームは人との繋がりのツールにすぎません。オンラインで別プレイヤーが居るゲームなら話は別ですが、100%プログラム相手にそれを言ってしまうと現実逃避にしか思えません。

ドラクエを題材にしてこんなストーリーにするなら、素直に「ドラえもん のび太と夢幻三剣士」を3DCGアニメ化した方がマシに思えます。

書きたいことは山程ありますが切りがないので最後に一言。



時間を無駄にしたい人だけが観てください。
ヤマタノオロチ

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