MinaMi

ドラゴンクエスト ユア・ストーリーのMinaMiのネタバレレビュー・内容・結末

1.1

このレビューはネタバレを含みます

少し長いです。
結論としては、タイトルからYOUR STORYという言葉を取っていただきたい。これは自分のドラクエではない。A STORYかもしれないが、断じてMY STORYではない。

非常に評判が悪いことは事前に知っていたし、ラストシーンのキーワードとして「冷や水」「アンチウイルスソフト」という言葉を聞いていたので、なんとなく察しはついていた。

そもそも、原作のドラゴンクエストVには思い入れがあるので、どんな映画だろうと原作には及ぶまいと考え、観に行かないつもりでいた。
しかし、最悪であるという評判を聞いて、俄然興味がわいた。
ひどい映画になかなか触れる機会がないので、怖いもの見たさというか、評価の低い作品も観ておくべきだと思い、映画館へ向かった。もしかすると、今は世間に認められないけれども、価値観を根底から揺さぶられるような映画史に残る作品かもしれない。

そして、最初のカットから、悪い方向に価値観が揺さぶられた。

いいですね。いきなりウインドウ。SFCの画面懐かしいでしょ?どうワクワクするでしょ?という製作者の魂胆が見え透いて素直に踊らされてみようという気持ちになります。
夏休みの映画だもの。子供たち向けに作っているんですもの。わかりやすい方がいいですよね。

ええ、いいんですよ。大幅に幼年期をカットしても。薬屋のおじさんの洞窟もレヌール城も、ベラと春風のフルートもどんどん切りましょう。だから春が来なくて青年期でも冬のままなんですよね。誰も風邪をひかないし問題ないですよね。エピソードはどんどんカットしていかないと、1時間半にはおさまりきれませんから。

いいですよ。パパスが最期にぬわーーっっ!!って言わなくても。最後に残されたゲレゲレもさみしそうに鳴かなくてもいいんです。マリアもヨシュアも不要です。それよりウンコ出しておけば子供が喜びますもんね。ラインハット王の葛藤なんて小難しすぎますし、簡単にヘンリーと別れてしまえば短くてすみますし。

サンタローズが「そのままだ」というのは、ある意味優しさなんですよね。でも、村が廃墟になっていないことでこんなに物語が薄くなるとは思いませんでした。10年ぶりに再会したサンチョが全くふけていなくて何の感慨もないですね。若いままで会えてよかったです。

ゲレゲレとの再会もなんの思い入れもないので、あの頃の思い出を持ち出すまでもなく一瞬で仲間になってシンプルでとてもよかったと思います。
ルドマンとフローラはあの船ですれ違っただけの主人公に惚れたんですかね。あるいは、ルドマンとパパスの知り合いだったとしたら、パパスはリュカに天空の剣を抜かせることもなく勇者だと思い込んでいたなんてとんだおっちょこちょいですね。面白いなあ。

いいんです。子供向けなんでそんなややこしいことは描かなくて。
カボチ村での孤独なんて子供にはよくわからないですしカットしていきましょう。ブオーンは伝説の封印された悪魔なんかではなく、たまに街に降りてきて悪さをする昔話の怪物みたいな感じで行きましょう。恋敵アンディなんか描いてると尺も足りませんし。ビアンカとの再会も唐突にしていかないと納品に間に合いませんし。
「クエスト」をこなすっていう言葉二度と使わないでほしいですけども。
フローラは変化の杖も魔法の薬も使いこなせて器用だなあ。

リュカ・エル・ケル・グランバニアという名前ですがグランバニアは登場しないけど誰も気にしませんし。ビアンカ・サンタ・アルカパみたいなとってつけたような名前で誤魔化しておけばいいんですって。あとでリュカ夫人って呼ばれてますけど、リュカが名字だったんですね。

そんなこんなで子供が生まれます。勇者を探すこともなく、天空の剣を持って、召使と一緒に平和に暮らしていきましょう。女の子なんてはじめからいなかったんですよ。さあ、楽しく暮らしましょう。

からのゲマ来襲。からの石になります。はいはい。
石化した主人公は他人の子供の成長を見ながら、わが子の姿に重ねて切ない年月を過ごすわけでもないので安心ですね。これなら重すぎるなんてクレームも来ませんね。
わが子との再会も簡単にいきましょう。サクサク進めましょう。
プサンはいつまでウンコ臭いネタで面白いと思ってるんですかね。センスがすごいですね。
「ロボットがいるんですよ。今回は」なんていう伏線なかなか言えないですよ。センスがすごいですね。

妖精の村の思い出もないから、懐かしがる描写がなくて都合がいいですね。パパスとの感動の再会もなんてことないですよ。2秒くらいじっと見つめればそれっぽくなりますから。

くだらない茶番を挟まなければ、泣ける要素の一つや二つは残せたと思いますが。一つも面白くない茶番でしたし。

さて、いよいよ大詰めゲマとの決戦です。ヘンリーやブオーンが駆けつける熱い展開。有名な魔法どんどん出しますよ。今更ですがBGMはV縛りとかないんで、なんとなくいい感じでいきますよ。

ここまでならノーマルでした。
普通に観て普通に悪い評価つけていたと思います。

やっと来ましたクソゲーになる瞬間が。

「俺の名前はウイルス。大人になってもゲームしてるの?現実に戻りなよ。」

素晴らしい!『たけしの挑戦状』をリスペクトしているのですか?
『レディ・プレイヤー1』を観て、これくらい作れると思ったんですか?
これを『ラ・ラ・ランド』のラストと比べるのは無理がないですか?

所詮ゲームの映画化なんだからさって?
ドラクエV世代の大人が観に来るんだから、ありがちなままで終わらせるのはよくないんじゃないかって?大人の鑑賞に堪えうるように、予想を裏切っていかないとさって?
じゃあ前半の子供だましは何だったんだろう?

深夜ラジオのハガキじゃないんだから。
「こんなドラクエはいやだ」大喜利じゃないんだから。

真の勇者はアンチウイルスソフトですって?

笑わせに来てるじゃないですか。

プログラマーあるあるだよねって?
午前2時のファミレス会議のテンションを映画に持ち込むんじゃないよ。

これはゲームを俯瞰で捉えた問題作だとでも言われたかったんだろうか。
だったらせめてエンドロールでもっと芸術性をアピールしてくださいよ。なんで本編の使いまわしなんだよ。
メタを押したいならこの映画のCGをプログラムしている様子でも映せばいいのに。

使い古されたメタ構造では今更価値観は揺さぶられないし、どうだと言わんばかりに語られても、期待されるようなリアクションでは応えられない。
最後に自信満々でウンコ投げつけられた気分。きっとこれも伏線だったんだろうな。

スクエニもなんでこれでOK出したんでしょうか。
堀井雄二監修に名前載ってますけど原作ゲームファンなんてどうでもいいんですかね。
東宝も夏休みの目玉にしたかっただろうに、どうしちゃったんだろうか。
ドラクエブランドに飛びついた日テレもとんだとばっちりですね。

でも山崎貴総監督が悪いんじゃないですよ。
脚本が悪いんですよ。
脚本も山崎さんじゃないですか。
センスがすごいですね。

・脚本 1/10
・演技 3/10
・演出 0/10
・音楽 5/10
総合点 9/40
MinaMi

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