MasaichiYaguchi

シノニムズのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

シノニムズ(2019年製作の映画)
3.6
2019年・第69回ベルリン国際映画祭コンペティション部門で金熊賞を受賞した本作では、本作のラピド監督が、自身の経験を基に、故郷のイスラエルを離れ、フランスに移住した青年ヨアヴが経験するパリの生活と、自国への批判をシニカルかつユーモアを交えて描かれる。
主人公のヨアヴはハードな兵役生活を経て、イスラエル人としての自分は、もはや死んだものとして、ヘブライ語も今後一切喋らず、パリでありとあらゆることをしながら、フランス人に成り切る為に奮闘していく。
だが、そう簡単にはフランスにも、フランス人にも馴染めず、葛藤したり、自暴自棄になったりしていく。
国や言語、文化や風習が違っても、若者にとって自身を取り巻く環境に対して問題意識を持つ、自問自答することは、極めて自然なことだと思う。
「アイデンティティとは何ぞや」という疑問を投げ掛ける本作は、自身のアイデンティティを完全に捨て去ることは出来ないということを、ほろ苦いタッチで浮き彫りにする。