ころころもん

グレース・オブ・ゴッド 告発の時のころころもんのレビュー・感想・評価

3.0
カトリック教会の性的児童虐待問題である「プレナ神父事件」を被害者三人の告発を通して描く。
映画は不必要に感情的に動きのあるシーンはなく、会話と僅かな目線のやり取りなどミニマムなやり取りで進められる。タブーとされるような事に対して戦う登場人物たちの姿には心を打たれるものがある。

加害者であるプレナ神父を訴える話ではあるが、映画が始まって早々に神父は罪を認めて一貫してお互いの主張は食い違わない。それにも関わらず、映画が2時間以上続き、3人もの被害者の目を通して描かれる必要があった事にこの事件の闇の深さが出ている。

映画で描かれるような事件でなくともなんとなく生きていると「なかった事」にされるような事件は日常にありふれている。映画内に出てくる被害者側の関係者はいずれ「なかった事」になるだろうとかつて沈黙してしまった事に後悔する。今生きている間に解決しなければならない問題はたくさんあるはず。それらに対して自覚的に生きていこうと思わせてくれる映画だった。