苦しくて。悲しくて。そんなことおこがましいのだけれど。
生きづらさの中でもがきながら溺れそうになりながらただ、時が流れるままに流されてそれでも、ほんの少しの幸せをみつける。
ふいに甦る記憶のようにぽろぽろと語られる彼らの人生のものがたり。
彼女は声を荒らげず、ただひとり静かに涙を流し、たくさんの命が失われては生まれ、この世界の海原を渡る。受け入れ、赦し、知られざる愛をうたいながら。
悴んだ指が白湯の入った茶碗の温もりでだんだんと血がめぐってゆくように、あたたかい。まだ凍えているけれど、きっとまだがんばれる。冬のあとには必ず、春がやってくるのだから。
なんて優しく背中をさすってもらえたんだ。