架空のかいじゅう

在りし日の歌の架空のかいじゅうのネタバレレビュー・内容・結末

在りし日の歌(2019年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

今年始めに鑑賞して惚れ込んだ中国映画「象は静かに座っている」のフーボー監督自殺に関して、同作プロデューサーでもあった本作の監督ワンシャオシュアイの名を見掛けた。
そんな不穏なキッカケから興味を持った本作だったが、作品自体は過酷な時代を描きながらも穏やかな場面の多さに惹かれた。

「象は~」の4時間も、本作の3時間も長いどころか時間を忘れて没頭できたのは、時期や場面が割りと目まぐるしく移り変わる編集によって寝ぼけてる暇がない(ただでさえ人物の関係性がややこしく中国人の名前把握するのも大変。)のもあるが、彼らの暮らしをいつまでも眺めていたい、と思わせたもん勝ち。

どこか後ろめたさを抱えながらもパートナーと最期まで添い遂げる、自分にはできなかったので、映画の中の夫婦が羨ましく思えた。

舞台、撮影の美しさ。フォトブック感覚で思い返したくパンフに手が伸びる。
中国大陸の、豊かさというより格差により見える景色の幅広さに惹かれる。

一人っ子政策...
かつて当たり前のように横たわっていた異常な制度が人を、社会を、個人の関係性までもを人生レベルで歪めてしまうのは「幸福なラザロ」の小作制度の扱われ方を、ちょっと思い出した。
物語の作り方として面白いし、教科書読むより脳裏に染み込む感覚がある。
本国では表彰シーンなど10分カット版だけが上映されているとか...

自粛一部解除後の1本としてボリュームたっぷりで、
映画館が再開されて良かったなあと、しみじみ思った。