富樫鉄火

ニューヨーク 親切なロシア料理店の富樫鉄火のレビュー・感想・評価

2.5
この映画は、明らかに、テネシー・ウィリアムズの『欲望という名の電車』を、現代のNYに移植し、人物の性格を(善役に)180度転換したらどうなるかをやってみた、一種の実験映画……としか、思えない。
だって、原題『The Kindness of Strangers』(見知らぬ方々のご親切)は、『欲望~』のブランチの最後の名セリフだし、レストランのマネージャーや看護士さんは、明らかに『欲望~』のスタンリーやステラを、善役に転換したそのもの。
おそらくこの監督は、あの名作戯曲を愛するあまり、なんとか、ブランチを助けてあげたい、ああいう結末にさせたくない、そんな思いが、今回の映画になったのではないか……そういいたくなった。
以上の見方は、あくまで私見だが、それにしても、あまりにも盛り上がらない中途半端な脚本構成で、これでは海外で酷評なのも仕方ないと思う。
邦題で「ロシア料理店」と付けて日本人向けに盛り上げようとしたのもわかるが、『星降る夜のリストランテ』のように、終始、レストランや料理を背景に展開するかと思いきや、まったくそうではないのも、残念だった。
もっと、ロシア料理や、楽しいテーブル・ヴィジュアルが見られるかと思って楽しみにしていたのに。
富樫鉄火

富樫鉄火