よーぐる

ニューヨーク 親切なロシア料理店のよーぐるのネタバレレビュー・内容・結末

2.3

このレビューはネタバレを含みます

邦題とジャケットでほっこりレストランもの、お料理ものだと思いきや全然違った。終始重苦しく、暗い雰囲気。
原題のままの方が良かった印象。
要所要所に出てくるビルナイが紳士的で素敵。

ストーリーに関して、幼い子供2人を抱えて社会経験がほぼない母親がひとり知らない街で、衣類の万引き、料理をくすねる、ホテルにごねる、炊き出しに行く、図書館や教会で暖をとる、勝手にレストランの床で寝る…などを繰り返すシーンが長くノープランNY夜逃げ生活がしんどい。特に働きに出ようとする様子が一切なかった。努力もなく周囲の優しい人のおかげでうまく進んでいくが都合が良過ぎて、ジェフは真面目に働いたけどクビになったり家を追い出されたりしているのに…と思ってしまった。
切羽詰まった様子を表しているのはわかるが、人のコートや店のバッグ、息子用(なぜブランドもの…)の靴を盗ったあと悪びれない様子が道徳的にちょっと合わなかった。このまま誰にも助けられることなく盗みを繰り返し警察に捕まっていたら自分が刑務所で息子が夫の親権になっていたエンドだったのでは…
長男が裁判のことを言い出さなければ訴えるという発想もDVシェルターなどに頼ることも思いつかなかったくらい情報も余裕もなかったのだろうか。DV夫から逃げているときに夫との馴れ初めを話す神経もよくわからない。
長男が情緒不安定になって暴れがちになったり次男が徘徊がちになって死にかけたりいたたまれなかった。その都度特に怒ったり注意をしたりもない。
次男が低体温症で死にかけて入院した際、見つかってしまう恐れもあるが覚悟を決めて付き添うことにするのかと思えば夫から逃げることを優先して付き添わないのが驚いた。え?死にかけて顔も見てないのに???
あの年頃の子の親は隣で寝泊まりすることもあるくらい四六時中付き添うイメージがあったのだが、もう会えないかもしれない(回復してないかもしれない)次男を置いて逃げるのは心配じゃないのだろうか?特に不安そうなシーンが少なく違和感があった。
警官である夫から逃げているので警察は頼れず、夫から金銭DVを受けているので金銭がないとはいえそれを明かし行政に助けを求める様子もないし…離婚がおそらく成立してないうちにマークと熱いキスをするシーンも倫理的に受け付けなかった。
マークがやけに優しくしてくれた理由もクララが美人だった以外に浮かばなかったので、運だけの綱渡をしている感じで終始落ち着かない。舞台がロシア料理店である理由もあまりない。

アリスが病院で「待ってる人もいないんでしょ?12時間シフト入れる?」と言われるシーン、独身は病院で働くと何かとそんな役回りになるのNYでも共通なんだ!!と過去の職場を思い出し謎の感動があった。職場の人間関係がいやにリアル。
どこに行っても仕事ができないジェフ(優しいんだけど感覚がズレてる)の姿がリアルでうまかった。それだけにずっと見ていると辛い。しかし優しさと、仕事に向き合おうとする努力は感じられたので、本当にフォーカスされるべきなのはこういう人なんだろうなと…
そんな彼からデリカシーに欠ける申し出を受けていたが付き合うのが弁護士の方でよかった。アリスが今度は報われて大事にされて、幸せになれば良いなと思った。

「赦す」「他人に優しく」というワードがちらほら出てくる。
自分を赦し、他人に優しく。
でもできれば、頑張ってる人に報われて欲しい。
よーぐる

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