映画や小説に登場するシリアルキラーたちは、だいたい冷静沈着で頭脳明晰だったりする。
本作の主人公/フリッツ・ホンカの姿、発言、行動からは、想像上の人物ではないリアルさが感じられる。
主演の俳優さんの顔がとても良い。
人間らしさを剥き出しにした臭いが見た目から漂ってくる。
瞳が大きく、それは双眸というより、顔という肉に開いた2つの穴にしか見えない。
どこまで脚色なのかわからないが、酒場の常連たちのキャラクターや、女の子のくだりはよく出来てると思った。
あと小道具や美術も、嫌になるほどリアルだ。
色々ときつい場面が多い。
作りものだけど、そう見えない悪夢的な映画になっている。70年代という時代がそうさせたのか、ホンカの凶行が明るみになるまで長い時間がかかったようだ。最悪な巡り合わせというのはどこにでもありうると思う。
本筋とは無関係だが、風俗街にルビでザンクトパウリと訳してあった。
サッカークラブもあるドイツの街の名前なのに、どうかと思った。