けーはち

シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッションのけーはちのレビュー・感想・評価

4.3
フィリップ・ラショーが小学生の頃から大好きだった日本の漫画『CITY HUNTER』を実写化。フランスでは『NICKY LARSON』という題で翻訳され、人名もNickyやLauraといった名前に替えられているのを、本作の日本語吹替版で劇中登場するフランス語の文章までRyoとかKaoriとか日本の原盤に準拠した名前に換えた映像を用意。そこに意味があるかどうか知らないが多大な原作愛が籠められていることは確か。

基本的にB級コスプレ劇と言ってしまえばそうなんだが、キャラの外見を違和感のないレベルで落とし込んでいるのは無論のこと、原作の80年代の少年漫画らしい下ネタ「もっこり🍆」だの「100㌧ハンマー🔨でお仕置き」だの、おバカでお下品なギャグの完全再現……どころか、おフランス的な悪趣味変態センスも加わって、切れ味が増し増しである。

そもそも今作のストーリーが「超高性能の惚れ薬(香水)が開発され、それを悪用しようと狙っている連中から死守する」という顛末になっているので、「女を惚れさせて過剰サービスや不正行為をさせ、奴隷のように働かせる」とか「女好きの主人公があろうことか依頼人のオッサンに惚れてしまってそれを度々ギャグにする」とかいうコンプラ破壊ポリコレ無視のキワどいシーンが入ってきても、「薬の強制力だから仕方ないな~😁」で済むのだ(?)。

当然おバカお下品ギャグばかりでなく、そこから一転のクールな格闘や銃撃のギャップが『CITY HUNTER』のウリであるが、その点についてもジャッキー映画よろしく手元の器物を使ってのドタバタ楽しいおバカアクション要素も込みでテンポ良く切れているのは素晴らしいし、やや目先を変えて『ハードコア』のような主観視点バトルなども盛り込まれ飽きさせない。そしてキメどころでコルト・パイソンが火を吹くシーンでは、多少クドいほどのバレットタイム等の演出。本作に関しては「味付けがクドいくらいでちょうど良い」と感じる塩梅。

ラスト、女好きな主人公が親友の妹を愛しながらも、その想いを秘め、相棒としてのバディを守り抜く、そんな関係を示唆しながら、BGMはTMNの「Get Wild」で、カメラを止めて引くエンディング──というアニメ版の様式美を貫徹し、原作漫画風に加工したコマをハメる、完璧なファンムービーっぷりを披露。他にもいろいろ日本の漫画オマージュがイースターエッグ的に仕込まれていて、ここまでしてくれると、日本人としては感無量である。