綺麗にまとまった作品であると同時に、だからこそ意外性に欠ける面白さであった。しかしたった三年前の実際に起きた事件を、しかも実名でここまでの作品に仕上げてくるとは凄い。
わかってはいるつもりだったけど、こうやって物語を通して観るとセクシャル・ハラスメントというのは“訴えて勝てばいい”なんてものではない、醜悪で卑劣な犯罪であることを再認識できる。声を上げれば上げるほど傷つくのは被害者側であり、勝ってもその傷が癒えることはない。
男だからという理由で女性に対して横柄な態度をとってはいけないことくらい今の若者なら誰でも理解できると思うけど、そのことに気がつくまで人類は何千年もかかってしまったのはなぜなのだろうか…
”But not the last.”
ラストのこの一文に全てが込められていると思う。この問題が完全に無くなることはこれまでもこれからも決してないし、今後はこの物語の男女が逆転したパターンも問題になるかもしれない。男だからとか女だからとかでなく、一人の人間としてこの作品を噛み締めよう。権力を恐れず権力に屈さず、そして権力に溺れないように。
