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HiGH&LOW THE WORSTの炒飯のレビュー・感想・評価

HiGH&LOW THE WORST(2019年製作の映画)
4.8
現時点でのシリーズ最高傑作と思う。
シリーズ過去作のセルフオマージュをふんだんに取り入れながら、より洗練されブラッシュアップした内容になっており、短所を削り長所を伸ばした、HiGH&LOWシリーズの一つの到達点といえる。

全体においてテンポが良く一切の無駄がない。
序盤で幼少期の回想シーンが入った際には「ああ、二時間の間にあと3回はこれを見る羽目になるんだな…」と覚悟したがそんなこともなく。
いつものハイローであればドラマパートで若干の退屈を感じ「そろそろアクションが見たいな」と思うところ、今作ではそうなる前にアクションをくれる。内容もタイマン・少対多・一対多・多対多と「ガキの喧嘩」の範疇ながらバラエティに富み、どれもこれも見応えがある。
ドラマ自体もいつものベッタベタではあるが、明快なテーマ性と共通の敵打倒に群像劇が集約されていく形でうまくまとまっており、間違いなくシリーズ一完成度が高い。
個人的にアクション映画に求めるストーリー性というのは第一に「気持ちよくアクションを見られるための導線」であり、本作はそれが完璧な形で叶えられている。
不良漫画の金字塔・WORSTとのコラボであることも明らかに良い方向に働いている。ありがとう髙橋ヒロシ大先生。

一作品でストーリーの本筋が完結しているため、シリーズで最もご新規に勧めやすい作品でもある。また、冒頭の「カッケェ挿入歌をバックに厳ついスキンヘッドの不良軍団が闊歩する」インパクト満点のシーンでもう既に最高の映画であることがバレてしまう作りにもなっているので、逆にあのシーンでアガらない人は向いていないという判断もできる親切設計。

喧嘩アクション作品としての素晴らしさにばかり触れてきたが、一方で本作は表面的な暴力要素とは裏腹に、ハートウォーミングな青春映画としての側面も持っている。
バカで真っ直ぐな少年たちの青春を讃美しながら、同時に打ち出された「大人になるのも楽しいし、良いもんだよ」というポジティブなメッセージ。これから大人になる若者とかつて若者だった大人、すべての人へのエールである。
シリーズでこれまで登場人物たちがときに苦しんできた、「青春の不可逆性」に対するアンサーでもある。永遠じゃねえ、無限だよ…!

いつもながら、「四天王の頭文字をとって小沢仁志で〜」とか言ってキャッキャする企画会議、超楽しかったろうな。
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