TaiRa

ブルータル・ジャスティスのTaiRaのレビュー・感想・評価

ブルータル・ジャスティス(2018年製作の映画)
5.0
遅い暴力は怖い。初期北野武がコーマック・マッカーシーを映画化したみたいな雰囲気。

初ザラーだが普通に好き。とにかく時間をかけて一つの場面を描くので、暴力の発動が引き延ばされ緊張感を生む。実際に暴力が行使されなくても全体を恐怖感が覆う。同時に遅さがオフビートな笑いを生む。笑いと恐怖の連続性が感覚として身についてる作家。北野武もそうだけど基本的に笑いに基いてる人の描く暴力は怖い。チャップリンの「寄れば悲劇で引けば喜劇」ってある意味暴力的な視点な訳で。暴力警官コンビが停職食らってる間に強盗犯の横取りを計画。無駄な時間の連続が後戻りの出来なさを表す。引き戻すタイミングをズルズル失って行く感じ。その残酷性。警官二人の私生活をシンプルに描写し、劇的さと距離を置く。彼らはいわゆる主人公ではなく、ただの登場人物だという感じ。主人公は別にいるから。全ての人物に対しフラットで平等である事のグロテスクさ。覆面強盗犯なんか、二人いるのも最初は分からないくらい没個性的。だけど特に他と変わらず普通に撮る。彼らの様に一般的な人間とは全く異なる倫理観に基いて、理路整然と生きている生き物は怖過ぎる。近年、映画に登場した生き物でここまで怖い奴らはいないかも。一方で、本来映画の背景でしかない筈の「一般人」に最も人間味溢れる描写を用意するあたり信頼出来る。暴力が何かをしっかり理解している。鈍重な決闘とアンチカタルシスな終幕の渋さが最高。『ブルータル・ジャスティス』ってしっくり来ないから「野獣たちの墓場」くらい泥臭いタイトル付けて欲しかった。
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