電車内の痴漢行為を起点とした艶笑小話を、全3部からなるショートショートで物語っていく、新東宝配給のピンク映画。公開時「痴漢電車 相互連結」、改題「痴漢人生模様 車内で連結」。

同監督の痴漢電車シリーズは、軽快なナレーションを交えつつ、製作当時の世相をドラマに反映させるスタイルが取られているのだが、本作に限ってはそれらの要素が継承されておらず。3つのエピソードが、淡々と切り替わっていく方式になっている。

第1部は、女スリ師（井上真愉美）に財布を盗まれた痴漢男（鈴木幸嗣）の話。第2部は、婦人警官（水野さおり）に痴漢を働いた男（ジミー土田）の話。第3部は、不倫妻（橋本杏子）が、被害妄想と誇大妄想に苛まれる話。

とりわけ、第3部の心理コメディがヒジョーに面白く、警察官の夫（池島ゆたか）が無意識的に不倫妻を追い込んでいくという、ナンセンス・ギャグの王道を楽しむことができる。橋本杏子のコメディエンヌぶりも素晴らしい。

巨匠・深町章による「痴漢電車」。冒頭の痴漢シーンからフランス映画のようなしっとり加減。特に車窓の外から尻と手にクローズアップしているシーンの生々しさが素晴らしい。触られるだけだった女性が触り返してから、電車の走行音の音量が次第に上がっていくことで気持ちの盛り上がりを示す。痴漢されている間に男から財布を掏る手口で小銭稼ぎをしている女性と、その被害（加害でもある）に遭った男の邂逅。婦人警官に痴漢をして現行犯逮捕された男が普通に釈放されて、「どうせなら強姦罪で逮捕されたいな」と言い放つシーンは、こういう題材とはいえ流石に嫌悪感がある。

浮気した妻を猟奇的に殺害した男がいる、という話を食卓で笑顔で話す夫に怯える妻、飛んでM字開脚シャワーシーンで恥部を念入りに洗うショットの不穏さが最高だった。いざ夫婦でセックスを始めると、殺人事件の話を蒸し返す男、途端に女の顔にクローズアップするカメラ。セックス中に浮気相手の名前を叫ばずにはいられない女がコメディリリーフとして機能する。