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PITY ある不幸な男のmolのレビュー・感想・評価

PITY ある不幸な男(2018年製作の映画)
5.0
やっぱりこの人の作家性が好きすぎる…誰の心にもあるみっともなさとか矮小さをドラマティックに描く作品、簡単に言うと悪趣味なサイコパス映画が好きすぎる。自分と地続きな最低の人を見るとあぁ生きていていいんだなと生きてていいんだよと諭される映画よりもキクぜ…
この作品では同情されたい気持ちをテーマにしていて、それがこれでもかとバチバチに決まった画(シャッターが上がって海が見えるとことか、病院で出会う泣いている母親とか、部屋に飾ってる絵画とか、ケーキを受け取る準備をしてるとことかあげればきりがない)と悪趣味にも程があるクラシック(病室の生きてるか死ぬかどっちなんだというところで悲劇的な音楽がかかるのとか最高だし、弁護している被害者が別の人になぐさめられているのを客観的な視点で見るところとか、ケーキのシーンとか、チューニングが狂ったピアノとか!)で最高の演出だった。
ラストの展開は読めるが、来てほしいところに来てくれる気持ちよさがある。クッキーはお前のも思い通りにはならないというのもサイコーーーーー!!!
弁護士という設定もハマってる!普段は誰かに同情する、弁護する対象が言ってほしいであろうことを完璧に言語化できる人間が、多分初めて人から同情される、弁護されることになって、その気持ちよさから抜け出せなくなるという設定がいい。ある種神的な立場だった人間が、人になってしまったときに赦される気持ちよさから抜け出せるのか、神に戻りたいと思えるのか、そういうキリスト教批判的な視点が徹底的に冷笑的ですごく好きな映画。
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