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PITY ある不幸な男のレクのレビュー・感想・評価

PITY ある不幸な男(2018年製作の映画)
3.8
主人公は幸せな家庭にありながら、不慮の事故で妻が昏睡状態となってしまう。
そんな不幸を幸福だと感じるドMで構ってちゃんの男が、喪失による同情や悲哀に依存し、同情されることで悲しみを背負うことで自身を満たしていく。


あのヨルゴス・ランティモス監督作品『ロブスター』などに携わる脚本家エフティミス・フィリップということで観ました。
へーーーーんな映画っ!!!

ヨルゴス・ランティモス監督作品の脚本にエフティミス・フィリップが絡んだものを見ていくと生き物が象徴的なんですよね。
『籠の中の乙女』は飼い慣らされた不自由さを模す犬。
『ロブスター』は選択の余地を奪われた先に待つ動物。
この映画における犬もまた兄の選んだ不自由さの表れ。
『聖なる鹿殺し』は命の不自由さを象徴する生贄(人間)。

では本作『PITY ある不幸な男』ではどうなのか?
・・・ワンちゃんでした(笑)
この作品で犬がどういう役割を担っているのかは見ていただければ一目瞭然だと思いますが、こう見ると犬が好きなんですかね?

某ドラマで「同情するなら金をくれ!」という名台詞がありますが、本作では"同情を嘘偽りで買う"んです。
「世の中、捨てたもんじゃない」なんて言葉をよく耳にしたりしますが、それを逆手に取った人間の本質を暴き出す怪作でした。


ギリシャ映画に詳しくないので、テオ・アンゲロプロス監督かヨルゴス・ランティモス監督くらいしか把握してませんでしたが、本作『PITY ある不幸な男』の監督・バビス・マクリディスの名前もちゃんと覚えておこうと思いました。
正直、面白さはヨルゴス・ランティモス監督作品の方が上だと個人的には思いますが
それでもバビス・マクリディス監督は無駄がなく分かりやすい、だからこそ伝えたいであろうメッセージがちゃんと伝わってくる良い監督ですね。
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