ユーライ

浅田家!のユーライのレビュー・感想・評価

浅田家!(2020年製作の映画)
3.3
この監督の映画は以前から一部で熱烈に嫌われているのを知っていたが、実際に観てみてなんとなく理由が分かったような気がした。現実の瑕疵を無視して(触れない訳ではない)最終的に「良きこと」つまりハッピーエンドとして着地させている。こんな出来過ぎた話周りが全員理解者でないと成り立たないだろうし、愛らしく描かれているお父さんも頑固というより結構我が儘だ。そこら辺をクローズアップすればいくらでも厳しい話になるだろう、しかしそこには決定的な説得力がある。実話を基にしているということ。こういう映画には大なり小なり脚色があるのだろうが、「実際にあったことだから」と言われれば黙るしかない。前半はハチャメチャな息子がいかにして成功したのか、というありがちと言えばありがちなすったもんだを語り後半になると一気にトーンが変わる。震災についてどう向き合えば良いのか、という極めて重いテーマに向き合うことになる。少しドキュメント調の趣も感じさせてその変貌の大胆さを面白く見た。思えば同じ震災を扱った映画である『ハッピーアイランド』『風の電話』もフィクションとドキュメントを混同させたような作りをしており現実を描くならば、の方法論として一定の効果が認められている、みたいな感じだろうか。ミニシアター的な映画ならともかく東宝配給でこういう実験的な試みをやるのが良い。時折インサートされる海のショットも語らない慎ましさを感じさせる。シネスコの画面を使った左右に人物を配置させる構図が目立つ。カメラの位置など画面を面白く切り取ろうという意思は感じられるがいかんせん動きに乏しい。ラストの大仕掛けの風通しの良さで一気に締まる。エンドロール後に本物を見せる、実話を基にした映画は大体これをやってる。役者陣について特筆したいのは菅田将暉、あんな朴訥な青年も演れる恐るべき引き出しの多さよ。
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