映画人間

ラストナイト・イン・ソーホーの映画人間のレビュー・感想・評価

3.9
若い女優がダブル主演を果たし、現代と60年代のロンドンが入り混じっている、まるでジェットコースターのような非常に勢いのある映画だった。まずは予告編やポスタービジュアルでも感じたが、とにかくエドガー・ライト監督のセンスが光る、ネオンで輝く世界観が素敵だった。そして、現実なのか夢なのか、主人公が60年代のロンドンに住む女性と時を共にする構成が最後までドキドキさせてくれた。話としては、ホラーとも言えるし、サスペンスとも言えるし、様々なジャンルが織り混じっており、決してお互いを邪魔しない見事なバランスとなっていた。そして何と言っても、サンディ役を演じたアニヤ・テイラー=ジョイのキャラクターの魅力が凄かった。ショー舞台への夢に憧れ、自分の魅力を醸し出して、何とか売れようとする必死が伝わっていた。本作は奇しくも同じパルコ配給である『猿楽町で会いましょう』にテーマが似ており、希望を胸に田舎から都会に出てきた若い女の子達が、大人の男達に貪られていく悲劇を描いていた。60年代のロンドン、きっと華やかな世界には間違えないのだろうけれど、その裏側では独り苦しむ女性の姿があったであろう事を監督は私たちに伝えようとしていたと思う。
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