Ninico

ラストナイト・イン・ソーホーのNinicoのレビュー・感想・評価

4.0
クイーンズ・ギャンビットのアニャ・テイラー=ジョイが出ているというそれだけで映像は美しくファッショナブル。
内容はとんでもなく個性的。

映像や音楽がかっこいいだけでなく設定も物語も特殊さが混雑しているので観る方は覚悟したほうがいい。

前半は意味深かつオシャレで期待感を煽られるのだけど、後半ではゾンビものB級ホラー映画よろしく、ただただどぎまぎさせられる。顔の溶けた亡霊たちに襲われるシーンは子供が観たらトラウマになるだろう。
(私みたいな大人の映画好きならこの手のシーンのもっとエグい描写も観てきただろうから多分大丈夫。スプラッタ要素は極小なのでそういう視覚的な意味での怖さはない。そのくらいの綺麗めホラーといえる。)

表現については、映画好きがピンとくる名作を想起させる場面がいくつかあって、
例えば、懐古趣味によるタイムスリップ的なシンクロ設定はミッドナイト・イン・パリのようだし、
Petula ClarkのDowntownのアカペラシーンは17歳のカルテを思い出す。
クールないい女から優男への挑発的なツイストのダンスシーンはパルプフィクションを思い出す。

物語については、女性の性暴力被害がテーマとして存在している。
私の生きた東京では経済格差が深刻でこの手の仕事のおかげで命が救われた側の女の子も沢山いた訳で、闇雲に男が悪いという構図にもなりにくい状況が90年代〜ゼロ年代の東京には確かに存在した。
60年代のロンドンはどうだったのだろうか?
フェミ映画としてはその点も含めて被害者の感情や事情が説明不足だった印象はある。主人公は彼女が可哀想だから助けたかったとしても、まずなぜそこまで感情移入するに至るか、同性という理由だけでは片付けられない気がする。

映像は可愛いしオシャレだし、もしあなたが若干オタク気質なら、一緒に観た人とあれこれ語れそうだから楽しいと思う。
もし、そうではなくてポップなエンタメ映画が好きでデート目的で映画に行くタイプなら、ちょっとこの映画は違うかもしれない。
Ninico

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