yui

ラストナイト・イン・ソーホーのyuiのネタバレレビュー・内容・結末

2.9

このレビューはネタバレを含みます

2022年劇場新作一本目。
監督はこの映画で何を言いたかったんだろう?ってずっとアレクサンドラの最後について考えてる。

これまでフィクションに救われる主人公を描いてきたエドガーが、「自分が救われることができたフィクションは女性を踏みつけ犠牲にした上で成り立っていたものだった」「フィクションが逃げ込む場所であったことそれ自体が男性特権だったのかもしれない」と気付いた。
だから60年代を舞台にした上で、無闇に「古き良き時代」を賞賛しない、搾取されてきた女性側からの視点を"ホラー"という形で描いた。
ここまでは納得出来る。

序盤のエロイーズがタクシーの運転手に感じる恐怖、サンディがカフェドパリで浴びせられる不愉快な視線や言葉。女性が感じるあのべったりとした、訴えても大抵理解されない恐怖は確かにホラーに近い。なかなか攻めたなと思った。
作品を通して性暴力・性的搾取にはっきり抗議する姿勢を示した。
それでも今一歩、まだフェミニズム映画として評価はできないというか、ここが「男性の描くフェミニズムの限界」なのだろうか、と思ってしまいさえする。

なぜアレクサンドラはよりによって自分が殺した男たちと一緒に火に焼かれなけれはいけなかったんだろう?
アレクサンドラが殺した男たちはサンディを殺したのに。

純粋に60年代ファッションに身を包んで踊るアニャ・テイラー=ジョイは最高に可愛くて魅力的だったし、トーマシン・マッケンジーも美人で真っ白なエナメルのコートがよく似合ってて可愛かった。きらびやかなネオンも音楽もお洒落だったしセンスは最高。
ただこの人後半から急に雑になる印象なんですよね。ベイビードライバーの失速とラストの雑さも酷かったし…
後半のチープなホラー展開はいらなかったかな、無理にホラーにしなくてもスリラーに振り切れば良かったのに勿体ない。
「女の子が死んだ」シーンからのネタばらしはゾクゾクして最高だったけどあのラストは…
いつ手のひら返すかとハラハラしたジョンが最後の最後まで紳士で安心したけど、あまりにもエロイーズにとって都合の良い意思のないぺらぺらのキャラクターすぎたのも気になった。

このラストで何が言いたかったの?ってやるせない気持ちがどうしても残っている。
yui

yui