そらりす

主戦場のそらりすのレビュー・感想・評価

主戦場(2018年製作の映画)
4.0
マイケル・ムーア作品と同様に、この種の物議を醸すドキュメンタリー作品が作られ公開されること自体が好ましいことだと思います。立ち見でしたが、疲れることなく興味深く観ました。

慰安婦の問題が本作の中心的テーマですが、それ自体よりも現代日本社会を取り巻く言論環境や社会的力学を俯瞰するという観点で意義深いと思います。

監督は単なる傍観者ではなくて、彼なりの整理を提示する語り手の一人でもあります。その前提として、誘導的ではないインタビューによって各論者に自由に語らせ、何が主たる争点なのか、各争点についての主張はどんなものなのかを炙り出します。

未知のものは恐怖の対象となり、それ故防衛反応が現れるものですが、こうして明るみにすることにより個々の人間の無力さや情動が分かるようになれば、個々の人間の善悪性よりも、その背景にある人間社会のメカニズムこそ省みることが求められるのではないかと思います。
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