Jimmy

ニノチカのJimmyのレビュー・感想・評価

ニノチカ(1939年製作の映画)
5.0
新型コロナウィルス騒動で気が滅入る話題ばかりなので、楽しい映画を観たいと思って、エルンスト・ルビッチ監督の『ニノチカ』を観た。4年ぶりの鑑賞。
久しぶりに楽しく笑える映画、さすがルビッチ!

この映画を初めて観た時、これまで全く笑顔を見せないと思っていたグレタ・ガルボが大爆笑していて驚いた。
パリを舞台にして、ロシアの宝石の所有権を巡る争いと男女恋愛ドラマが描かれるルビッチならではの「お洒落で粋な映画」。

冒頭、フランスでソビエト3人組が高級ホテルを次々と見ては出て行くシーンからして、微笑ましい。この3人はソビエトの食糧危機に備えて、ソ連が以前個人資産を没収した時の宝石を売却するためにパリにやってきたのだった。
しかし、公爵夫人は「不当にソ連が没収したものなので返還を要求する裁判」を起こす。
…ここで、裁判シーンになるかと思えば、そこは裁判など描かずに物語を進めるルビッチ。
そうして、裁判になるので、ソ連から特別全権大使がやって来るのだが、やって来た全権大使は女性。名前はヤクショーバ・ニノチカ。彼女を演じるのがグレタ・ガルボ。
当初、ニノチカはやたらと科学的に分析する大使であり、絶対に笑顔を見せない。
ニノチカに惚れてしまったレオン(メルヴィン・ダグラス)は、ニノチカをエッフェル塔に案内するが、事務的な会話が多い。エッフェル塔の構造、階段の数は829段+254段、など。

労働者向けレストランにニノチカが行くのを知ったレオンも、そのレストランに行く。
そして「Smile!」(笑って)と言われるが仏頂面のままのニノチカ。レオンは彼女を笑わせようと面白い話を次々としようとする。
「2人のスコットランド人が道で会った…」、「月には5億人が住んでいる。それじゃあ、半月の時は混み合うね(笑)」など。
ニノチカは笑わないが、映画を観ているこちらが笑ってしまう…(笑)
そしてレオンが椅子からコケたのを見て爆笑するニノチカ。これ以降、仕事中にも笑い出すニノチカ。
顔に柔らかさが出て来て、最初の仏頂面との微笑ましい顔との対比を上手く演じているグレタ・ガルボ。さすがである。

そして、フランスに到着した時には貶していた帽子をかぶるニノチカは、レオンと恋に落ちてから変わった。レオンの部屋で、抱擁とキスする二人。
ニノチカが部屋に来るので女性の写真を机にしまったレオンだったが、ニノチカはそれに気づいて「私の写真を欲しいと言わないでね。机の中にしまわれるのは堪らないから…」とこれまたナイスなセリフ。
そして、宝石の裁判が終わる木曜日にはパリからソ連に帰らなければならないニノチカに向かって、レオンは言う。「木曜日に終わるのは裁判だけだ。私たちに木曜日はやってこない」…これまたお洒落なセリフ。

レオンとニノチカはレストランに行くが、綺麗なドレスを着たグレタ・ガルボは本当に美しい!

レストランで生まれて初めて飲んだシャンペンで酔っぱらってしまったニノチカは宝石を強奪される。宝石は夫人の元へ。夫人はニノチカに「宝石は返すから、レオンをあきらめなさい。17時40分の飛行機でロシアに帰りなさい」と取引を持ちかけられて、国のために帰国するニノチカ。
帰国したニノチカに、パリのレオンから手紙が届くが、検閲でまったく読めない手紙。
「思い出までは検閲できない」など、おしゃれなセリフが素晴らしい。

脚本にワイルダーが参加していることもあり、監督がエルンスト・ルビッチであれば、こうしたソフィスティケイテッド・コメディは、さすがの出来栄え。
笑えて、感動させられるルビッチ監督の傑作。
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