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100日間のシンプルライフのodyssのレビュー・感想・評価

100日間のシンプルライフ(2018年製作の映画)
2.5
【靴は何足必要か?】

喜劇なんですが、喜劇になりきれていない。そんな映画です。

モノに囲まれて生きている現代人。
それを疑問視して、奇妙な賭けを行う親友同士の男二人。

そのうち一人が、靴が何十足もあるという様子が写し出されていました。

現実にも、かつてフィリピンのイメルダ・マルコス大統領夫人は、マルコス大統領がクーデターで失脚した当時、1000足の靴をもっていたとして、非難された。

ソフィア・コッポラの『ブリングリング』でも、米国のセレブが、靴を何十足も持っている様子が映し出されていた。

でも、大統領夫人やセレブでない先進国の現代人は、何足靴を持っているのでしょうか?
これを読んでいるあなた、靴を何足持っていますか?

私はといえば――
外出用の黒色合成皮革靴。
本革の黒靴。儀礼的な場に出るとき使用。
ゴム長靴。大雨や雪のときに。
ウォーキング(外履き)用シューズ。
ウォーキング(内履き)用シューズ。
その他、内履き体育館用。
合計、6足。

だから私としては、10足以上の靴を持っているヤカラの気が知れないんです。でも、人にもよるからね。

しかし、逆に靴を一足も持たなくていいとか、或いは一足だけで足りるとも思わない。TPOという奴はありますからね。

むかし、作家の吉行淳之介のエッセイを読んでいたら、自分は靴を一足しか持たない。同じ靴をはき続け、ヨレヨレになったら買い換えて、また履きつぶすまで使う、というようなことを書いていました。
しかし、それは著名な作家で「身なりに無頓着な人間でして」で通用するから、ってな話。
ふつうの人間は時と場合があるから、また東京在住でない人間は短靴では済まない場合があるから、一足ではどうかなと。

つまり、(この映画のように)靴がなくて裸足だと不都合。吉行淳之介のように一足でも不都合。
でも、靴を何十足も持っているというのも、何だかなあ。
真理は、その中間にあるような。

本作品は「黄金の中庸」を描いていません。
喜劇なんだから当たり前だって?
でも、せめて着地点では常識を暗示してほしいもの。なのにそれが出来ていない。
そこがどうもね。
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