ぜんらまる

ミッドサマーのぜんらまるのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.8
ビジュアルイメージやモチーフそのものにキャッチーさやこだわりが見られる一方で、展開や演出に意外性が乏しい。

序盤のクロスカッティングやアクションつなぎは多少目を引いたが、かえって筋を分かりづらくしていて、やはり効果的とは思えなかった。また冒頭からヒロインの身内の不幸をショッキングな画で提示した割に、のちの展開にほとんど寄与しないのも、全体的な構成として疑問符がつく。

肝心のコミュニティの異常性の表現や、主観的世界(幻覚)の描写は、いち視聴者としては想像の域を出ず、ただ作り物ものめいた美しさだけがそこにある。民俗や宗教に対する理解も極めて浅く、凡百の創作物に見られる「通俗的な」「俗悪な」民俗的、あるいは宗教的表現とさして変わらないように見える。

前作ヘレディタリーと違い、シュールな裸体表現をオチに固めなかったのは幾分良く、単体で鑑賞に臨めば一定の評価はできるものの、「聖なる鹿殺し」「ウィッチ」「スイス・アーミーマン」「ディック・ロング」「ライトハウス」など、カルト的傑作怪作の多いA24作品の中で、なぜアスター映画だけが一般にとりざたされるのかは、やはり理解できなかった。
奇想より直接的なエログロ表現に頼るため、ゾッとした感覚も薄く、怪作とも傑作とも言い難い、ごく個人的には絶妙に好きになれない「良作」である。
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