みかんぼうや

ミッドサマーのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
2.9
【話題性を狙い敢えて奇を衒った壮大なカルト集団コント】

ホラー系はあまり好きではないので当初全く見る気もなかった本作ですが、連日のようにタイムラインでフォローしている方々のレビューが流れ、その評価の割れっぷりの凄さに、ついに鑑賞してしまった・・・

まず、物凄く面白かった!レビューで散見された「結構長く感じる」という時間面も全く気にならないくらいほど、全編を通じて見入ってしまった。ハラハラもしたし、これは話題になるわ!と納得・・・ですが、その上でのこの評価。エログロが嫌いというわけではないです。繰り返しますが見ている間は面白かったのです。ただ、途中から映画というより何か壮大な長尺のお笑いコントを見ている感覚に陥ってしまったのです。私の中の天の邪鬼ぼうやが発現してしまいますが、見終わった後、面白かったけど映画としてこの作品に高得点をつけたくないなと思ってしまったのです。

物語開始から“例の”崖の儀式シーンが終わるまでは結構な緊張感をもって見ていました。これはなかなかに衝撃的な作品だな、と。しかし、その後から話が進むにつれて、一つひとつの儀式や風習が、段々とただ話題性を意識して奇を衒った奇行をてんこ盛りにしているだけに見えてきてしまったのです。

一度このモードに入ってしまうと、もう全てがそのようにしか見えなくなり、同じく“話題”のエロシーンも「なんでわざわざこのシチュエーションにする必要があるんよ!」と突っ込みを入れながら爆笑、主人公の悲しみにみんなで泣きまくるシーンも魂の解放の意図があるのでしょうがやっぱり滑稽で笑けてくる、熊のシーンも「敢えてこの方法をとる必要ある!?」と突っ込んで笑う・・・登場する死体が全て作りものに見えてしまう、そして見終わった頃には、そもそもこの村の全風習がお笑いのネタを見ていたかのような感覚に陥ってしまったのでした。
そもそも、最初の崖シーンで登場人物たちも強烈な違和感を感じてるわけだし、途中でどんどん友人もいなくなっているわけだから、早く逃げなさいと(笑)。

まあ、実際のカルト集団の儀式って、こういう遠い目線で見ると、その意義が分からないようなものばかりなのでしょうが・・・

でも、なんだろう。キューブリックやデヴィッド・リンチの作品と比べてしまうと感じるこの「作られた狂気」感。

テレビのある番組でお笑い芸人が「ホラーとお笑いって紙一重なんですよね」という話をしていたことを、本作を見て改めて思い出し、妙に納得しました。ホラーって常識ではありえない現象が多く、それを一歩引いた見方で見ると結構シュールなお笑いなのだな、と。

ということで、その時見ている分には面白かったのですが、好きな映画を見終わった後に感じる「考えさせられる何かや気づき、学び、納得感」といったものが一切残らず、なんとなく作品全体に薄っぺらさを感じてしまったのでした。
みかんぼうや

みかんぼうや